2024-09-29

何も言わないやさしさ

先日の三連休彼女から旅行に誘われた

俺の転勤に伴い、半年から遠距離恋愛で、会うのは月一ぐらい。

そんな折、三連休から彼女から温泉旅行に誘われた。

いいね、行こうと俺は返事をしたものの内心焦りがあった。

彼女とはここ数カ月セックスをしていなかった。

月一で会う際、彼女の方から何となくそうした雰囲気に持っていこうとしているなと感じることはあった。

でもその度、俺はやんわりと否定した。もちろん言葉にはせず、すぐに眠ってしまうような感じで。

理由自分が今EDからで、そのことを彼女には話していない。

EDとなった原因は梅毒を移されたからで、それが原因となってそれ以降、勃たなくなってしまったのだ。

そして、”移された”とは何を意味するのか。彼女はすぐに理解するだろう。

彼女のことを傷つけたくはない。その一心で、俺はこのことを墓の中まで持っていくつもりだ。

から今は、完治したとはいえ性交渉が恐かった。そして温泉に誘われるということは、そういうことだろうと理解はしていた。

それでも俺は今でも彼女のことが大好きで、誘いを断ることは出来なかった。

その日は合流して、LINE通話で話すだけでは語りきれなかった話が積りに積もり、途中カフェによってお昼を食べてゆっくりたっぷりと話をした。

彼女は相変わらず美しかった。楽しそうで、俺も楽しかった。

何とかなるだろうという、そういった楽観視があったのだと思う。

そのあと予約した宿に向かい、美味しいご飯を食べて、温泉も最高だった。

問題は夜。布団を並べて横になり、明かりを消した。

俺はすぐに寝たふりをした。疲れていたんだろうと思われるように。

どれぐらい経ってからだろうか。バサッと布団の捲れる音が聞こえ、彼女が起き上がったのが分かった。

ねぇまだ起きてる?と俺に声をかけてきた。俺は無視して寝たふりを続けた。

彼女が近づいて来る気配を感じた。

彼女鼻息が俺の顔に当たった。生暖かい鼻息

彼女は俺に口づけをした。優しいキスで、唇と唇が触れ合う程度の、中学生がするようなキス

俺の反応を伺うように彼女は俺の眼前で微動だにせず、それでも俺は目を瞑り続けた。

諦めたようにゆっくりと、彼女の気配が目の前から薄れ始めた。

ギシッ、ギシッ、と畳を踏む音が静かに響き、彼女が移動しているのが分かった。

俺の布団が少し捲られた。俺の足首に彼女の手が触れた。

彼女は徐々に手を上げていき、足首から脹脛、太ももと手を上へと移動させていく。

やがて陰茎に辿り着くと彼女はそこで手を止め、浴衣の中に手を滑り込ませてくる。

彼女は俺の陰茎を触り、撫で、それからゆっくりとしごくように上下に動かしていく。

俺は寝たふりを続けた。

それでも微かに、少しずつ、元気になっていくのが分かった。

しか復調の兆しは途絶え、半立ち以上にはならなかった。

彼女不思議そうに何度か手を止め、そして再度しごくように手を動かすが俺の物はそれ以上微動だにしなかった。

突然、ぬめり気を感じると彼女が口に咥えたことが分かった。

彼女は俺の布団に顔を潜り込ませ、口の中で俺のものを激しく弄ったが、それでも結果は変わらなかった。

どれぐらいの時間が経ったのかは分からない。俺は終始目を瞑り、時間確認することは出来なかったのだから

暫くして彼女は諦めたように俺の元から離れ、ギシッ、ギシッと音を聞かせて自分の布団に戻ると、それ以降は絡んでくることはなかった。

俺は未だ寝たふりを続け、結局朝方になるまで眠れなかった。

翌日、彼女は昨夜の事には全く触れず、まるで何事もなかったように振舞った。

結局、俺たちはセックスをしなかった。

チェックアウト前に露天風呂を堪能しようと朝風呂に入り、部屋に戻ると俺の鞄が開いていた。

部屋に戻ってきた俺を見て、ゴム、持ってこなかったんだね。と彼女が呟くように言った。

そしてそれ以上、なにも言ってこなかった。

俺は今でも彼女のあのとき言葉意味を考える度、なんとも言えない気分になる。

最近友達がまた結婚したんだよね、と彼女が帰りの車の中で会話の脈略を無視して呟いた。

俺は何も答えず、ご飯すごく美味しかったね!と続ける彼女同意し、微笑んだ。

彼女は敢えて言葉にすることはない。昔から、やさしい性格なのだ

彼女の期待に、今は厳しいけれど、いつかその期待に応えてあげたい。

俺は本心から、そう思っている。

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