24歳の時の話
初めての会社のパワハラセクハラから脱して転職するため私は方々を駆け回っていた
前日の帰宅が夜中近くなってしまっていた私は、その日起床も電車の乗り換えもギリギリだった。
当然トイレに行く暇もなかった。
そんなことはわかってたはずなのに、家を飛び出た私は眠気で朦朧とする意識をセブンイレブンのLサイズのホットコーヒーで叩き起こすことしか考えられなかった。
会社へは駅からバスで5分もかからないのに、本数が極端に少ないせいで余裕を持って面接に行くには歩くしかない。
私は何も考えずに歩き始めた。その瞬間に微かに感じた尿意を無視しなければあんなことにはならなかったのに。
半分ほど歩いたところで、かなり尿意は強くなっていた。
必死に歩きながら、会社までのルートにコンビニがないか必死にGoogleマップで検索するも、道中唯一のトイレは会社の横の大きなスーパーの中。
履き慣れないパンプスで足の小指は限界だったけど、私はひたすら歩き続けた。
スーパーの看板が見えてきた。あと100メートル。苦しい。50メートル。もうダメだ。入り口はすぐそこ。もう諦めたい。入って即座に天井を見上げトイレの看板を探す。あった、赤と青のあれこそが----
ジョワァ…………
人間は安心すると副交感神経が働き、緊張が緩む。高校の生物の教科書の図面がフラッシュバックした。
ストッキングを伝う生々しい温度を、どうか膝までで止まってくれと祈る以外に、私はどうしたらよかったんだろう。
ヤクルト一本分くらいで済んだのは、私の祈りが届いたからだろうか。
清掃がまともにされてない個室で生暖かいストッキングと下着を脱いで、ビニール袋にぶち込む。ノーパンで面接に挑む覚悟は出来ていた。
貧乏性の母親の影響で私のカバンにはスーパーのビニール袋がいつも小さく折り畳まれて入っていた。
下半身をガサガサのトイレットペーパーで必死に拭き取るけど、安物のそれはカスをポロポロ出すだけでまともに吸水しない。
泣きたくても泣くこともできなかった。
私はあの時、誰よりも無力だった。
仕事帰りに夜食を買いながら、あの時漏らした場所を見つめている。
もう3年も前だろうか。まるで昨日のように鮮明に思い出せるのに。
結局受かったんだね、よかったね