怒涛の幕末に命を燃やし自らの信じる道を貫くそれに、共感しそのように在りたいと願い
彼についての文献を読み漁った。
恋愛の感覚もまた歪んでいた。基本的に、他人の所有する物が好きだった。
味見しては、振り、虚無を知り愛を知らず
年相応の流れのまま籍を入れた。
職を転々とし飄々と風のままに生き
誰かの忠告には耳を貸さなかった。何となく、その予感があった。
虚構の中の登場人物に感情移入するが如く生きてる実感を失ったまま
物語性のない現実の中で、自らの失望と欠如感を埋めるだけの日々が始まった。
物で足りる筈もないのに金を費やし何かを諦めた分、別の何かを得た。
それは時に柔らかい毛並を帯びたものだったり、心を癒やす音楽であったりした。世間一般には均衡を保つにはそれが必要だと言われていた。
物語性のない現実の中には、藻掻いている人が沢山いた。一番になれないコンプレックスを抱えて苦心している人、綺羅びやかに見えても水面下で必死に水をかいている鳥のような若者、
機運に恵まれず就職難に陥った良く似た人物、子を産んだが障がい者としての生き方に困っている人達。
それらを助けるために福祉があり自治体があるのに決して満足には機能せず
表面だけ取り繕った平和の下で、苦しみに歪む市井の人々を思った。
結局、何万人相手では誰も救えなかった。事実は事実として認識していても手出し出来ない状況があり、ほとんどは藪蛇に思われた。果敢にも手を伸ばそうとする彼女を嘲笑いはしなかったが共に寄り添いもしなかった。
今まで傷付け見殺しにしてきたもの全てから報いを受けろと苛まれているようだ。
次産まれる時は、きっと貧しく愚かな「人間」なのだろう。流転し、翻弄される。そしてまた遅々として進まぬ医学に唾棄しながら孤独に陥り、病室で臍を噛む。
何かを喪い落ち込んだ経験が?