「全裸監督」に「カバン屋」と呼ばれているオッサンが登場する。「ビニ本」のサンプルを詰め込んだボストンバッグからブツを無造作に取り出して商談する、あの印象的なオッサンだ。
そもそも「カバン屋」とは裏社会の業界用語であり、最も有名な用例は恐らく「ハチンコの不正客・ゴト師向けの裏モノ機器を販売する人」の事を指す場合だろう。
怪しいブツで金になるものだったら何でも売る、黒のボストンバッグと身一つでいつでもどこでも商売する怪しいオッサン、みたいな意味で使用されていると思っていれば大体合ってると思う。
で、「カバン屋」って久々に聞いたな懐かしいな、前に見たのはいつだったっけ、と思って思い出したのが、これだった。
ゲームソフトはナマモノ。相場があるもの。何本製造したかがわかれば、それが適正数で相場が安定するか、過剰生産で値崩れするかがわかる。高値の正価で仕入れず、過剰在庫だけを狙って現金仕入れをする「カバン屋」と呼ばれる人たちもいた。彼らは情報を早く手に入れるため盗聴もした。
そうして仕入れたソフトはテキヤに売られた。だから、当時は祭りにいくとファミコンソフトを売っている夜店が必ずあった。夜店どころではない。渋谷の路上、109の横、東急本店通りでは常時、安売りソフトが売られておいた。
こうした裏流通で儲けた若者たちは、みんなベンツに乗った。業界の人からは、揶揄と蔑視の意味を込めて彼らの乗るクルマを「ファミコン・ベンツ」と呼んだ。ファミコン愛好者にも、メルセデス愛好者にも好かれそうにない名前だ。「ファミコン・ベンツ」。
ここで「あ!」と思わずにはおれなかった。【「ファミコン・ベンツ」揶揄と蔑視の意味を込めた、いわゆる「蔑称」】。
私は思い出したのだ。確か昔「ビニ本裏本で儲けてベンツ乗り回してる奴の車」の事を「ビニ本ベンツ」「裏本ベンツ」と呼んでいたのだ。
自分が、というよりかは自分の交友関係を辿ってそこそこ怪しい方面のオッサン連中から酒宴の席での放言の中で、といったところで、だ。
つまりは、その、アレだ。「ファミコンブームの狂乱」も元を辿れば、「カバン屋」「○○ベンツ」という「蔑称」すらも含めて
「ポルノブーム(ビニ本→裏本→アダルトビデオ)の狂乱」の相似形というか劣化コピーというか、裏の商売は業界違えどもそんなに大差無いというべきか。
いや違う。
これはつまり、「”『新規事業』で設けている若者”を揶揄と蔑視していた人種が同一」(どちらもその筋の人)だから起きた事なんじゃないのか?
時期的には「ポルノ」の後に「ファミコン」だと思うが殆ど重なってる感じもする。