あるゲイのツイッターユーザーのツイートがちょっと前にに少しバズっていた。内容は次のようなものだ。
『「LGBT当事者の方々、みんなカミングアウトしてください!社員はみんな受け入れますよ!」という会社の研修が行われたが、カミングアウトしなければ「いけない」みたいになってて気持ち悪い、自分はそっとしておいてほしい』
このツイートには様々な反応が寄せられていた。その中にあったあるリプライが自分はとても印象に残っている。
『LGBTを受け入れろと言ったのはお前らだろ、それなのにそれが行き過ぎたら「やめてほしい」なんて都合良すぎ』というリプライだ。
このリプライをした人はおそらくあまり深く考えず、漠然とLGBTを何かしらの"思想的な団体"だと思っているのだろう。街頭で演説してる右翼団体みたいな。
その考え方は、「性的指向」と「性的思想」を完全に取り違えている。
冒頭のツイートの主は、LGBT当事者だからといって、LGBT団体に属しているわけでもなければ、「LGBTを受け入れろ」という運動に参加してもいないのだ。
この「性質」と「思想」を混同する的外れな批判は、LGBTに関すること以外にもいろいろなところで目にする。
ある新聞の投書か何かの欄で、ある若い女性が「女子力という言葉は、女性に女らしさを押し付けていて良くないものだ」というような意見を主張していた。
「いや、そもそも女子力という言葉を使い始めたのは女だろ、何言ってんだ」(もし投書した女性が「男性が悪い!」というニュアンスを含んでいたらこの反論は最もだが、女性は明らかに「女子力」という言葉が使われている日本の状況についてのみ批判していた)
この的外れな反論は、"女性という集団"はある"思想集団"であるという漠然とした感覚から生まれたのだろう(これにより、女性対男性という対立構造を勝手に作り出している)。これも女性という「性質」と女性のなかの一部の「思想」とを混同している。
何か思想的に気に食わない対象を「叩きたい」、「馬鹿にしたい」という欲望からおそらく無意識のうちにこの混同を行ってしまうのだろう。
もし気に食わない思想と出くわしたならば、その思想を持った特定のLGBT団体や特定のフェミニストや女性団体だけを叩けばいいのに。
いや、ひょっとしたら叩いてる人たちは「LGBT」や「女性」という性質を持ったすべての人が気に食わないのであり、それを叩く理由がほしいだけなのかも知れないが。
自分達がLGBTであることをカミングアウトして、正々堂々と生きることまではOK。 問題は、ノンケに対して、「おまえもLGBTになれよ」と価値観を押し付けて、他人を支配しようとすること...