母は若い頃、秘密結社『シックスティーン×シックスティーン』と、それに対抗する組織『ラボハテ』との戦いに巻き込まれて瀕死の重症を負う。
『ラボハテ』は最新の技術を用いて、母の失った体の部位を機械で補うことで命を繋ぎ止めた。
サイボーグ化して戸惑う母に『ラボハテ』から告げられたのは、『シックスティーン×シックスティーン』の野望だ。
それを聞いた母は、『ラボハテ』に協力を申し出た。
何より、自分の体を機械化した要因となった『シックスティーン×シックスティーン』に対してツケを払わせないと気がすまない。
こうして母はサイボーグ少女として、秘密結社との激闘を繰り広げることになる。
「お父さんと出会ったのもその頃だった。懐かしいなあ」
「どういう経緯で父さんと出会ったんだ。メカニック担当だったとか?」
「いや、俺は女子バトルものでいう、半ば巻き込まれただけなのに主要人物として出張る一般人みたいなキャラ」
つまり、事情は知っているが、俺たちと同じモブキャラみたいな立場だってことだ。
「その戦いは歴史の闇に葬られたが、魔法少女や超能力者までいてカオスだったなあ。もしアニメだったら十中八九ボツにする企画だ」
妙な例え方をするのは、父がアニメスタジオに勤めているからか。
俺たちは本題だけ話してくれと急かした。
ムカイさんは、その『シックスティーン×シックスティーン』によって作られた戦闘用ロボット。
「ムカイさんは自立して二足歩行で動くから、厳密にいえばアンドロイドだな」
「どうも気になって、つい……」
ムカイさんは、母と幾度となく戦った。
全身が機械な分、性能面ではムカイさんが上回っていたが、人間の柔軟な知恵がある分、いつも母が一枚上手だったらしい。
そうして敗北する度、ムカイさんは改造されていった。
そして、とうとう当時の技術の粋を集めた強さを持つに至り、ムカイさんは「今度こそ奴に勝つ」といきこんでいたらしい。
しかし、決着はつかなかった。
ムカイさんは他の構成員によって陽動され、母と戦うことはなかった。
結局、その作戦で『シックスティーン×シックスティーン』は壊滅。
戦うために作られたムカイさんは、戦う理由がなくなってしまったのだ。
結論から言えば、俺たちはこのパズルを自力で解けていない。 ただ、言い訳をさせてくれ。 最も簡単な問題とは、“解が分かっている”ことだ。 解を持つ人間から見れば、さぞ滑稽...
弟の方は、ムカイさんに踏み込んだ話をした。 「ムカイさんってさあ、何で母さんのことよく聞いてくるんだ?」 俺が慎重に立ち回ろうとしているのがバカらしくなるくらい、ド直球...
ある日、弟は聞いてもいないのに自らの違和感について話し始めた。 「ムカイさんってさあ、話にやたらと俺たちの母さんについて捻じ込んでくるよな」 気にしたことがなかったが、...
家族のことについて、俺たちはどれだけ知っているだろう。 いや、“どれだけ知っているべきか”といった方が適切だろうか。 少なくとも俺は、家族だからといって全てを知りたいと...
≪ 前 ムカイさんの開発者は、戦闘力を上げるためにAIも発達させていた。 しかし、それによって予定外の行動をする可能性も上がる。 そこで、ムカイさんに「倒す」という優先プロ...
≪ 前 何はともあれ、これで俺たち兄弟が熱中したパズルゲームは終わりだ。 ということで、今回の話もこれで終わり ……というわけにもいかないか。 俺と弟はそれで良くても、ム...