(……うん。屁だな。)
僕は「呑気症(どんきしょう)」と呼ばれる病気?持ちだ。
唾液が過剰に分泌されるため、それを飲み込んでしまう体質なのだ。
そしてその唾液を飲み込む際、必ず空気も多少は飲み込んでしまう。
それ故、ゲップが多い。もしゲップを我慢し続けた場合、その空気は臭気を伴って肛門から排出される。
――そう。屁である。
呑気症である僕は、街中でもよく屁をこく。
ようは気づかれなければ良いのだ。気づかれたとしても、全く知らない他人にどう思われても良い。
……やばい。
確実に漏れた。
焦る。
うんこ漏らしたことは確実にバレないよう、かつ、迅速にソファへの被害を最小限にしなくてはいけない。
もう、少しは外皮(スーツ)にまで染み出している……。
僕は尻肉に挟まった半液体状のうんこを尻目に、即座に立ち上がった。
ケツにヌルヌル感を感じながらトイレへ何事もなかったかのように向かう。
トイレは空いていた。
カミに感謝した。なぜなら、いち早く拭き取らなければ、外皮への更なる浸入を許すことになるからだ。
鍵を閉めると同時にベルトに手をかけ、素早くパンツを確認する。
びっしょりだ…
意味不明な感動を覚えた。非常事態ほど、ムダな思考が働くものである。
さて、後はきれいに拭き取ってまた何事もなかったかのように自分のソファへ歩き出すだけである。
……においの問題が浮上した。
悩んだ僕の目に飛び込んできたのはアルコール製剤の便座クリーナーだった。
とっさにトイレットペーパーをちぎり取り、アルコールを大量にかけてパンツにアルコールを染み込ませた。
ただ、一番の問題は、今このソファから立ち上がるのが怖いことである。
確実に"シミ"が残っている筈だからだ。
トイレに立ったときは、カバンでさり気なく隠した為事なきを得たのだが、退店となるとそうもいかない。
そのことを逡巡しつつ、私は冷めて行くコーヒーと共に駄文を打ち込むのであった。
(ホント、どうしよう)