2018-02-06

[] #49-3「先輩の恋愛遍歴」

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その次に出来た恋人は、バイトの同僚。

前回とは逆に積極的に行き過ぎた結果、公私をわきまえない立ち振る舞いになってしま破局

俺も同じところで働いていたので、その時のことは覚えている。

『恋は盲目』とはよく言うが、ほんとに足元を疎かにする人間を間近で見たのは初めてだった。

「俺も近くで見ていましたが、バイト中も個人的な話をしまくるのはダメですよ」

「ゆうても恋人関係なわけやん」

「それだって人間関係の一形態でしょ。完全に切り離すことはできない。地続きなんです」


「“恋愛”というものに対して、張り切りすぎなんだと思いますよ。いつも通りの自分で接してみては」

俺のこの指摘を受けて、次に出来た恋人にはとにかく平常運転でいくことにしたらしい。

だが、先輩の歯に衣着せぬ物言い逆効果であった。

個人的愚痴にすら、取ってつけたような正論否定してしまったらしい。

「不平不満だったり、個人的な話を身近な人にするときというのは、大抵は肯定してほしいんです。少なくとも否定はしてほしくないのでは」

別にワイは間違ったこと言ったつもりはないんやけどなあ……」

「是非の話ではなくて、人と人との個人的対話ですからね。杓子定規論理倫理相手感性を一蹴するのは、“恋人という個人”を尊重する気がないと受け取られるのかも」

「ええ~? マスダ、『恋愛人間関係の一形態だって言ってなかった?」

「『同じ』だとは言っていませんって。いつでもどこでも恋人相手にそんな他人行儀な接し方したら、それはもう恋人じゃないでしょ」

「……確かに

俺に言われてやっと、そのことに気づくのか。

恋愛のことになると、なぜ先輩はここまでバカになってしまうんだ。

「やや子供だましな方法ですが、とりあえずウンウン頷いてください。そして合間合間で、相手意思尊重するという、肯定する意を言葉で示すんです」

なんや、そんな簡単でいいんか」


そうして俺の言われたとおりに、恋人個人的な話にはウンウン頷いていた。

「いや、正直しんどい……心にもない相槌をうつたび、自分免疫細胞が徐々に死んでいく感覚がする」

だが、これは先輩にとってはかなりツラいものであった。

結局、そのツラさが顔に滲み出てきたあたりで破局

「あの~、カン先輩。そもそも自分恋人といて嬉しいとか楽しいとか、何らかのメリットが勝っている前提がないと、そういう関係は成り立ちにくいと思いますよ」

メリットぉ?」

「先輩は、その人のどこに魅力を感じて付き合っていたんですか」

割と普通質問をしたつもりだったのだが、カン先輩はウンウン唸って答えられない様子だった。

「いや、あったはず。確かにあったという記憶だけはあるんやけど……」

この体たらくだと、いずれにしろ長くは続かなかっただろうな。

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