ネットで動画を観ていると、観る動画を探す行為が煩わしく感じることがある。
無数に存在する動画の中から、自分が観たいものを検索し、探し当てなければならない。
一方でテレビは、とりあえずつけていれば何かしら映像を垂れ流してくれる。
映像が気に入らなかった場合でも、適当にチャンネルを回し、ベターな物を探せばよい。チャンネルは10にも満たないため、一巡する手間もほとんどかからない。
そこでふと思ったのだが、ネットがこれだけ普及した時代、未だにテレビをありがたがって見ている人は、「自分で選択・判断ができない人」なのではないだろうか。
内容が面白い面白くないは置いといて、とりあえずつければ何かしら提供してくれるテレビは、楽と言えば楽だ。しかし、自分が本当に観たいものを観られるという点において、テレビ番組がネット上の動画より勝っている点は皆無である。
もちろん、異論もあるだろう。「テレビ番組の方が面白い」という人だっている。
ネット上の動画は本当に玉石混淆だ。面白い動画の何百倍もつまらない動画が存在している。
しかし、テレビ番組が玉ばかりかと言えば、必ずしもそうとは言えない。むしろ毒にも薬にもならない、当たり障りのない番組が大多数だと感じる。「当たり」と言えるような番組に出会う確率は、ネットの動画よりも低い。
個人の感覚次第ではあるが、「テレビ番組の方が圧倒的に質が高い」という意見には、首を傾げざるを得ない。
そこで、テレビの利点として考えられるのが、上記の「自分で選ばなくてもいい」という点であった。
無数の動画の中から面白い物を探して観るという手間を掛けずとも、何となくそこそこの物を見せてくれる。砂漠の砂をかき分けてダイアモンドの粒を探さずとも、とりあえず河川敷に落ちているガラスの破片で満足できる。そういう感覚なのではなかろうか。
大体、テレビを長時間見ている人も、「この番組が観たい!」と思って観ている番組はごくわずかなのではないだろうか。
視聴時間の大多数は「なんとなく時間が空いたから」「食事の時に寂しいから」つけているのがほとんどではなかろうか。
そういう意味では、テレビの弱点とも言える「リアルタイム視聴しかできない」という点も利点になり得る。好きな時に好きな番組を観られない代わりに、基本的にいつでも何かしら流れている。ただ時間を潰したり気を紛らわしたりする時に、選択の手間が無いのは確かに快適であろう。
そうして「一億総白痴化社会」が実現してしまった今日、テレビから娯楽を与えられることに慣れすぎてしまった人たちにとっては、自分で観たい物を自分で決めることすら出来なくなってしまったのではないだろうか。
電波オークションが導入され、チャンネル数が増えて選択肢が広がった時、彼らが「不便になった」と言い出さないか不安でならない。