おおよそ男社会というのが成立していたのはバブルが崩れて不景気が訪れるまで、
つまり大企業にパワーがあって年功序列で男一人が定年まで働けば家族を養えていた時代の話だ。
そのあとウーマンリブが持て囃されたのも女も働かなにゃ食えなくなったのを「女性の社会進出」とか言って誤魔化しただけの話であって、女性の権利を認めたわけではない。
その男社会の中でオタクが排除された存在だったかというとそんなことはなくて、在りし日のオタクは自身たちも強烈な男社会を構築し、
知識やコレクションによるオタクマウンティングタワーを立て、女子供を排除していたわけである。
ゆえに不景気による男社会が崩壊した後のオタクたちは、知識による他者との競争ではなく、より自身の中にある欲望に素直な「萌え」文化を生み出す。
そこはかつて男に求められた能力がなくても、本当に「好き」という気持ちだけで居場所を与えてくれる自由な社会である、
90年代に一大ブームとなったエヴァは、庵野監督の今の自分の気分を作品にしたいというコンセプトの通りにそんな過渡期の時代の空気を映していて、
つまりあれはお姫様を助けなければいけないという男の役割を全うできない王子様(シンジ)と、王子様より強くありたいお姫様(アスカ)のジレンマのお話である。
最終回では多様な世界=二次創作を包括する世界観が提示され、一つの世界観に対する知識やコレクションを競っていたそれまでのオタク文化との決定的な違いを打ち出した。
かくして「萌え」を手に入れたオタク文化は男社会に入れないもの達を内包して急速に発展していった。それが90年代から今までのオタク文化に起きていることである。