「死んでやる!」と窓に足を掛けて3階から飛び降りようとしたり、
授業中に叫びながら教室を飛び出して、何故か服を脱ぎ始める、なんて珍事もあった。
そんなUさんだが勉強はできた。それもかなり。
新聞にも目を通しているらしく、「なんとか還元水」など時事ネタを口にすることもあった。
そんな落差のあるUさんは「変わった子」として学年の誰もが知る存在だった。
小学校が同じだった子達は「あの子はいつもああだから。」と呆れ顔。
中学校で初めて彼女を目撃した俺たちは驚きつつも、その奇行に次第に慣れていった。
幾多の問題行動はあくまで威嚇のようで、本当に窓から飛び降りたり、
相手を殴りつけたりすることは、俺の記憶が確かなら、一度もなかった。
実際に攻撃してこない、ということが分かった一部の男子は満を持してUさんの事をバカにし始めた。
彼女が奇行を起こす度に「ありゃキチガイの顔ですわ」とか言ってゲラゲラ笑った。
奇行は収まる気配もなく、そうこうしてる間に卒業シーズン。俺たちは中学を卒業した。
俺自身が中学卒業後に色々あったこともあり、卒業後は中学時代のメンツの大半と疎遠になった。
Uさんは市内上位の進学校に進んだらしい、という噂を聞いた。
ここ最近になってSNS界隈で「発達障害」という単語を頻繁に目にするようになった。
最近では雑誌やらテレビでも特集が組まれたりして、徐々に大衆の認知度も上がってきている。
TLに流れる「発達障害の特徴」といった類のガイドラインを読んで、ふとUさんの事を思い出した。
理解してくれる人が必然的に少なくなる高校や大学では上手くやれてたのか。
気付けば俺たちも既に20代半ば。就職は無事にできたんだろうか。
賢い子だったから、大学院とかで専門的な研究でもしてるのだろうか。
それとも人生がうまくいかず、もがき苦しんでいたりするのだろうか。