2016-04-10

[]4

「縦ロールさん」

 姫カットお嬢様が欄干に手をついて下々を見下ろす縦ロールお嬢様に声をかけた。

 いきなり刺し貫かれないための用心である

貴方とここで事を構えるつもりはありませんわ。

 それよりあちらをご覧になって」

 姫カット様が手のひらで示される方をご覧になると、

 お二方のお嬢サバイバル部員が戦端を開こうとしていた。

「手の内を知っておけば、のちのち有利でしてよ?」

「……」

 猛者は見えないところで周到なものだ。インシュロック使いのお嬢様も下々を見下ろした。

 戦っているのはアセチレン溶断器(切断器)使いのアフロお嬢様と、

安全帯使いのツーサイドアップのお嬢様だった。

 アセチレン溶断器は見てのごとく、精巧な黄銅のノズルから

恐ろしげな蒼炎を吹き出している。

 アフロお嬢様圧縮酸素バルブを操作するたびに炎が白く輝き、キュゴーと轟音を吐き出す。

 彼女の威嚇は効果的だった。顔に火を向けられれば本能的に避けられずにはいられない。

 実際、ツーサイドアップお嬢様は腰が引けていた。

 だが、彼女には遠距離から敵を攻撃する手段がある。

「てやっ!」

 気合いと共に、安全帯のフックがフックにふさわしい軌道アフロに向かって飛んでいく。

 スウェーでかわしたお嬢様リボンがはらりと切れ落ちた。

「うふふ……このフックは外側を研いであるのよ」

 そのまま金物を舐めそうな厄い表情でツーサイドアップお嬢様は言った。安全要素がどこにもない。

 くさり鎌そのままの用法で、自爆に注意して、彼女連続攻撃を繰り出す。

 アセチレン溶断器の威力をもってすればフックも溶断できるが、

それには事前の加熱が必要であり、高速移動する状況では非現実的だった。

 アフロお嬢様は何度か試すそぶりを見せたもの時間の浪費に終わる。

 だがそれは伏線だった。

「フックが切れないならスリングを切ればいいじゃない!」

 いつもより一歩踏み込んだ火が化学繊維スリングを焼き溶かす。

 高熱に劣化したスリングはフックの遠心力に耐えきれず、危険な金物は接線方向に飛んでいった。

「ちっ!」

 かんばせに焦りの色を浮かべて後退するお嬢様を、青い炎が追いかける。

 そこに一閃、銀色の光が走り、褐色と黒のボンから伸びる二本のホースを切断した。

「ふふふふ!わらわの安全帯は安全ダブルフック(ランヤード)でし!!」

 語彙力あやしく勝ち誇るツーサイドアップのお嬢様

 外野のお二方は品評された。

「あの方はアフロさんの恐ろしさを見誤っていますわ」

アフロさんの真の恐ろしさは、二つのボンベを抱えて動き回る、その膂力!」

 姫カットお嬢様のいうとおり、

 アフロお嬢様はすかさず武器ボンベそのものに持ち替えて振りかぶった。

 ごちん!

 鈍い音に続いて、爆音がとどろく。

 が、どぅーん!!

 アセチレン空気中分量2.5~81%の広い爆発範囲もつ、とても危険物質である

 酸素については言うまでもない。

 アフロお嬢様安全処置より攻撃を優先させる果敢な精神が裏目に出た。

 ホースが切断されたまま戦闘を続けた二人は起こるべくして起きた事故に遭ったのだった。

「……し、獅子奮迅の爆発でしたわね」

突っ込みませんわよ……」

 爆煙たなびく中、まなびたいことのなくなった姫カットお嬢様

髪をなびかせて観戦席をたった。脇腹をさりげなく庇っている。

 二人の戦闘中も縦ロールのお嬢様に仕掛ける機会をうかがっていたのだが、

ついに決定的な隙は見つけられなかった。

 ただ一矢を報いてもいた。

 縦ロールのお嬢様はいつのまにか欄干にインシュロック

止められた一房の巻き毛を見つめて一笑する。

姫カットさん……恐ろしい子!」

 暴力的危険帯と写真提供リタイア

 残り6人!

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