小さいころドラマや小説で「自分の本当の気持を大事にするのは素晴らしいね」と何度も伝えられてきた。
テレビで有名人もそう言っていたし学校の先生も「自分の気持ちを素直に伝えなさい」と教えてきた。
嫌な事があったら嫌だなとちゃんと思うようにした。
学生の頃はそれで何とかなった。
大学や高校では少し危うかったけど何とかなるの範疇だったと思う。
どっちも第二志望で滑り込めたし就活も大体似たような具合に行った。
毎日辛いことが起きる。
何度も何度も何度も「本当の気持ち」が嫌だなと自分に訴えてくる。
クレーマーに怒鳴られて上司に怒鳴られて初歩的な失敗をしてフラフラになって帰ろうとしたら上司に飲みに誘われ断れずにお説教三昧で二日酔いのまま次の日出社してようやく土曜日になっても仕事の宿題がたんまりと。
その状況の中で嫌だ嫌だと毎日考えていたら限界が来るに決まっているのに自分は気づかなかった。
そんな日々が続くはずがないんだ。
どこかで割りきってその状況を楽しむぐらいでいるべきだったんだ。
就活のハウツー本やライフハックの薄い本には「大変な仕事は自分を成長させるチャンスだと捉える」と書いてあったっけ。
あんな知ってる人向けの説明じゃ自分みたいなまだ気づいてなかった人間には分からないよ。
精神的に前向きなサイクルを回すために、大変な状況の中でもいい事を見つけていってそこに意識をフォーカスしろなんて誰も教えてくれなかった。
いやおざなりな言い方は沢山されていたけどただのポジティブ信仰で中身なんてないから伝わらなかった。
辛い時に辛いと訴える事は必要だ。
自分で自分に辛いと毎日訴え続ければ自分にとって自分自身が敵になってしまう。
こんなに苦しいと毎日伝えているのにいつまでこの社会にしがみつくんだ、この悲鳴が本当に聞こえているなら首に縄をかけて屋上から飛び降りろ。
自分の心から自分の心へ向けられるシグナルはいつしかそういったメンタルヘルスが危うい物になっていく。
本当の気持ちを大事にしようとした自分はその言葉を毎日聴き続けた。
そうして壊れかけた。
駄目なんだこれじゃ。
「辛いけど毎日乗り切れてる。大変なことを乗り切るのはゲームのハードモードみたいで楽しい」と思い込んじゃって良いんだ。
そうすることで結果として気持ちや人生が上向きになってこのクソみたいな毎日が少しずつ良い物に変わっていくんだ。
もしも今度「自分の本当の気持ちを大事にしなさい」と言う人がいたらこう言ってやる「大事にするのは他人の本当の気持ちでしょ?自分の気持ちは自分で変えちゃえばいいんだから」って。