ラジオの映像ってなんじゃ? と思うかもしれないが、今時はラジオでも映像機器の仕事がたくさんある。
で、業界が業界だから、社員から社員へのセクハラはもちろん、プロデューサーからタレントへのセクハラなんかもよく見かける。
もちろんいけないとは分かっているんだが、特に行動はしてなかった。
だったんだけど、この前(八月ぐらいだ)、あるイベントがあった。
所謂、公開録音じゃなくて、そのラジオを聞いてくれてる人に向けたイベントだ。
セクハラをされた側の女性は、そのラジオのアシスタントをやっている子だ。
(アナウンサーじゃないので、タレントさんだと思う。具体的に何をやっているかは知らない、顔はよかったからアイドルかグラビアか声優かお笑いのどれかだろう)
セクハラをした側の女性は、そのイベントにゲストで出演したアラフォー構成作家だ。(偉い人ではないが、ベテランではある)
イベントは自体はつつがなく終わり、俺も映像の仕事をちゃんとこなし、もう帰ろうとしていたときだった。
その日は夏祭りか何かがあって、花火が打ち上がるということで、社屋に人がたくさん残っており、普段は定時で帰る事務の子なんかもいて、けっこうゴミゴミしていた。
なのだけれど、逆にテラスになっている所と収録ブース以外はほとんど人がいなくなっていた。
ただでさえも人通りが少ない、俺の仕事道具を置く倉庫(ちなみに三階だ)の周りは全く人気がなかった。
その近くの自動販売機の前で、構成作家とタレントがもめていた。
最初はイベントの内容でお説教くらってるのかなあ? と思ったけど、
「乳バンドみせて媚びてんじゃねえよ!」とか
「スカートの中見せてみろよ」とか、もう酔っぱらいが店員さんに絡んでるような感じ。
タレントの子は「ごめんなさい」とか「すみません」とかいって謝ってるんだけど、聞く耳を持たず
だんだんと声も大きくなっていき、行動も荒々しくなっていった。
で、構成作家がそのタレントに触ろうとした時、思わず身体が動いてしまった。
まあ、気づかない振りをして「おつかれでしたー」なんて言って、自動販売機でコーラを買って帰っただけなんだけどな。
一応、ちょっと見張ってたけど、その後は二人はバラバラに帰ったみたいだった。
で、俺が今更こんな話を書いてるのは、
「男から女へのセクハラのときは助けなかったのにどうして、今回は助けてしまったんだろう?」ということが、自分の中で重荷になってしまったんだ。
ようするに、相手が所詮は雇われの構成作家で、女だから俺は助け舟を出せたわけだ。
間違いなく、肩書きのついてる社員からバイトやタレントへのセクハラなら、無視していた。
けれど、俺はたった一回だけとはいえ、セクハラから女を守ってしまった。
俺はこれから一生、セクハラの現場に立ち会ったら、女を守らないといけないのだろうか?
やらない善よりやる偽善かも知れないが、やれるときだけやる偽善というのは、自分の中で理屈が通ってなくて、モヤモヤする。
こんなことなら、助けなければよかった。
男からのセクハラこそ、守ってやれよ。 実際行動に移してみるとしんどいけどね。しかも守ってやった女の方から 「あんなのはセクハラなんかじゃなかった」 とか言われたときの悔し...