2012-07-12

丹羽中国大使の発言に見る、戦前天皇制の残滓

数日前の日経に、伊藤忠OB丹羽氏が中国大使に任命される際、

外務省幹部からブリーフィングされた内容が載っていた。

あなたを任命した人は、9月にはいなくなります

(=あなた後ろ盾がいなくなりますから覚悟しておいてください)

これに対して丹羽氏は

自分を任命したのは天皇陛下なんだが・・」と回答したらしい。

日経2面には、

「これは丹羽氏の勘違いで、天皇認証しただけ。任命したのは内閣であり、

 この場合事実上岡田外相。(で、岡田外相は9月にいなくなった)」

と解説していた。

しかし、自分には、

丹羽氏は、任命権者が内閣岡田であること、天皇認証者でしかないことは知っていて、

 それでもわざと『自分天皇陛下に任命された』、と語った」

ように思える。

丹羽氏の世代、戦前生まれの世代の場合

天皇認証された認証官」というのは、相当に「名誉な地位」であり、

丹羽氏自身も「自分認証官なんだ」という思い入れがあったんだと思う。

それを戦後憲法価値観で、

あなたの任命権者は岡田外相であって、天皇じゃないのでお間違えなく」と突っ込みいれるのは、

「会話が噛み合っていない」ように見える。

いや、もっと言えば、丹羽氏の「自分を任命したのは天皇だ」発言の「真意」は、

自分天皇認証官という権威ある地位を拝している。

 そうそう簡単には、この地位を奪えないはずだ。

 自分更迭する、というのは、それはつまり天皇認証を否定することであり、

 天皇陛下にドロを塗るようなことだ、不敬だ」

ということを言外に匂わせたかったのではないか

まり、「天皇に任命された」という発言は、 

「俺の地位を奪うのは天皇を傷付けることだ」と

天皇権威を最大限利用した、極めて高度な発言、ということじゃないのか?

(その外務省幹部に通用したかどうか、知らないが)

戦後憲法では

天皇政治役割を演じてはならない」と教科書的には書かれている。

しかし、実際のプレーヤーの心の中で、

天皇権威をカサにしよう」という邪念があると、結局天皇は「政治的に利用される」のである

1960年の安保騒動のころの新聞を読むと、

安保改定デモの混乱を解決するために、

昭和天皇国民和解を呼びかける」という案が真剣検討されたらしい。

また、最近では、いわゆる「富田メモ」で、

昭和天皇A級戦犯の合祀に不快感を示した」とされた。

で、自分が「あきれた」のは、いわゆる「左派リベラル派」の方が、

嬉々として「昭和天皇平和主義者だ、靖国護持反対派だった」と声高に叫んでいる姿。

お前ら、靖国潰しのためには、天皇権威を利用する、つまり国民主権」を放棄するのか?

自分だったら、たとえ反靖国であっても、毅然として、

天皇の発言である富田メモで以って、政治右往左往するのは、

 天皇政治的影響を与えることになるので、極めて不適当」と発言する。

・・・ということで、戦前天皇制の残滓は、なかなか日本の政治から消え去らないものである

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