2011-03-14

被曝についてのメモ

手元に放射線業務従事者の講習でもらった資料があるので、参考にしながら、平易な言葉でまとめてみる。

厳密性はついては妥協している部分があります

ことば


放射性物質からの距離について

放射性物質からはある量の放射線がでているが、距離の二乗(距離×距離)に比例して、放射線は弱くなる。

なぜなら、遠くなるにつれて、ある方向に飛んだ放射線の密度は小さくなるから

バームクーヘンを思いうかべて欲しい。内側の生地は外側の生地よりも小さいので、同じ面積でみると、よりたくさんの放射線を受けることになる。

 

したがって、放射性物質への対策としては、第一に「距離を取る」ということになる。

1km離れたところでは致命的な量の放射線を浴びるような場合でも、20km離れれば、放射線は1/400と大きく減るから

 

また、放射線は、長い距離をとぶにつれて、間にある物質とぶつかって減っていく。

たとえばα線は紙1枚でさえほとんど通りぬけられないしβ線は薄い金属板くらいのものがあれば止められるので、間に障害物があれば、どんどん減っていくことになる

γ線中性子線は、水や鉛やコンクリートなどといった吸収されやすい物質が大量になければ止めることができない)。

こういう意味でも、距離を取ることは重要になる。

 

放射性物質から近づいてくる

いくら放射性物質から離れても、放射性物質のほうから近づいてくることがある。

たとえば、核燃料にも使われているウランは固体なのでじっとしているのだが崩壊するうちにラドンという気体の放射性物質になる。

ウランが容器に密封されていなければ、こうした気体や微粒子になりやすい放射性物質がどんどん飛びでてくることになる。

たとえば、核燃料は被覆管で密封されているが、これが溶けると、そういうことが起きる。

 

このようにして放射性物質が飛びちった場合にも、発生源から距離を取ることが効果的。

おならは離れれば匂いもうすくなるように、大気で薄まって、とどく量が減るから

しかし、風下の方向にはよりたくさんの放射性物質が向かうから、風向きには注意しなければならない。

 

また、飛びちった放射性物質から距離をとるためには、屋内にこもって、外の空気を入れないようにするのが良い。

数mの距離を取れるだけでも効果的だし、壁がα線β線を吸収してくれる。

 

外部被曝と内部被曝について

外部被曝」とは、からだのそとにある放射性物質から放射線をうけることを指す。

対して、「内部被曝」は、放射性物質からだに取りこんでしまい、放射線からだの中から受けることを指す。

 

どちらも、対策としては、飛びちった放射性物質から距離をとること、近づけないこと、が大事。

 

特に外部被曝への対策としては、とにかく皮膚を外気にさらさない、ということがあげられる(花粉とは違うところ)。

なぜなら、放射性物質が皮膚につくと、紙一枚で防げるはずのα線が届いてしまう。α線は紙のかわりに皮膚と反応し、細胞を激しく傷つけてしまう。

また、放射性物質を取りのぞくために丁寧に洗い流さなければならなくなる。

 

また、内部被曝への対策は、とにかく吸いこまないこと。濡らしたハンカチなどを鼻や口に当ててフィルターにすると、少しはましになる。

内部被曝の最大の問題は、いちど体内にとりこんでしまうと取りだすことができないので、ずっと被曝が続くということ。

たとえば、放射能をもつヨウ素がとりこまれたときには、たくさんの普通ヨウ素をとりこんで、からだがゆっくりと放射性のヨウ素とおきかえてくれるのを待つしかない。

放射線単位について

吸収線量(単位Gy=グレイ

放射線を当てられたとき物質が吸収するエネルギー

実効線量(単位Svシーベルト

ヒトのからだは、部分ごとに、あるいは放射線の種類によって受ける影響が違う。

たとえば、α線は皮膚には強い影響をあたえるが、内臓に届くことはほとんどない、などの差が出てくる。

Gy(グレイ)は、こういう性質を考慮していないので、補正したのが、Sv(という単位)。

単位に注意!
  • Gy と Sv は違う!(原発事故においては全身被曝を考えるから、1Gy = 0.8〜1.0Sv
  • 1 Sv = 1,000 mSv = 1,000,000 μSv = 1,000,000,000 nSv (0.000001 Sv = 0.001 mSv = 1 μSv

以下はmSvで統一している。

ヒトに対する放射線の影響

大量の放射線を浴びるとどうなるか

下のような症状は、線量がこの程度に達すると確実に起きる(逆に言えば、達しないと起きない)。

  • 500 mSv …… リンパ球が減少する
  • 1,000 mSv …… 嘔吐をもよおす
  • 3,000 mSv …… 脱毛がおきる。3,000-4,000mSvの被曝で50%の人が死亡する。3,000mSv- で永久不妊が生じうる。
  • 5,000 mSv …… 白内障を生じる
  • 7,000 mSv100%死亡する。

対して、線量が多くても確実に起きるとは限らない、浴びた放射線の量に比例して起きる「確率」が増える症状がある。

こうした症状は、研究結果、少ない量でもだいたい放射線の量に比例して起きることが分かっている。

どれくらいなら浴びても大丈夫か?

大量に浴びるのは論外なので、少ない量でも起きる「確率的な」症状について考える。

  1. 交通事故による死亡は、0.01%くらいの「確率」。これを、社会的に許容される死亡率の基準とする。
  2. 放射線1,000mSv を浴びたときの、がんで死亡する「確率」は、1.65%。
  3. したがって、「平均して」1000/165 = 6mSv/年 以下、安全のため余分をみて 5mSv/年 以下くらいならば、十分に許容される「確率」となる。
  4. 放射線業務従事者は、「平均して」基準値の1/10程度の被曝をすることが分かっている。
  5. したがって、基準値を50 mSv/年にしておけば、十分に許容されるリスクとなる。

という考え方によって、基準値は定められている。

「50mSv/年なら浴びても大丈夫」という基準値ではない。

 

平均5mSv/年くらいなら浴びても「交通事故で死ぬ」確率くらい(知り合いにどれくらいいるだろうか?)。

遺伝的な影響

被曝2世の追跡調査によって、両親が 400 mSv 被曝していても、遺伝的影響は見られないことが分かっている。

予想より、ヒトは放射線の影響を受けにくい。

少々の被曝をしたからといって、これから子供をうむときに障害を気にする必要はない。

普段から浴びている放射線の量

など。

関東で観測された1μSv/時という数字は、ブラウン管を抱いている程度。

  • そういえば、この記事で使った参考資料なんだが、60~69歳の林業従事者の死傷率が1/10より高い。 どんだけ過酷なんだろう、林業……。

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