2024-04-02

タイミー疲れた日記

こんど転職するのだが、見切り発車で仕事をやめた結果、次の仕事が始まるまで1か月ほど暇な時間ができてしまった。

2週間ほど休んだらもう休むのが嫌になってしまったので、せっかくなのでタイミーとやらを試してみようと思いついたときの話。

意外にも未経験だとできる仕事は少なく、やっと見つけたのは某化粧品とか日用品掃除用品を作っている会社流通倉庫でのピッキング作業

から夕方までガッツリ働いても9000円いかないのには驚いたが、バイトなんて学生の頃以来なのでちょっと楽しみだ。

働いてみると、想像していたよりもずっとホワイト、というか巨大なシステムの一部として期待されていること以上のことは一切期待されていない、という労働環境なのでなかなか気楽で楽しかった。

休憩を抜くと7時間ほどハンドフォークを引っ張りながら歩きっぱなしだったが、毎日リングフィットをしているおかげかさほどダメージはなかった。

そのダイナミズムを維持するために設けられたシステムとしての「優しさ(バッファ)」にあふれている。

巨大な流通網を維持するためには私のような間抜けでもその日のうちに戦力になれる必要がある。そのためのあらゆる仕組みが、工夫が施されている。

合理性体現した空間で、理論値に肉薄すべく黙々と動き回る人間たちは、まるで善のイデアに迫るため肉体という牢獄を鍛え抜いた古代ギリシャ人のように美しい。

支給されたハンディスキャナに表示されるがままに棚から棚へ飛び回るうちに不思議な陶酔感に包まれる。

それはすべての判断をこの偉大なハンディスキャナに委ね、自分預言者となり「正しい」世界の秩序を生み出してゆく、という妄想によってもたらされる境地だ。

いま世界には棚と、格納された物体と棚の間を神の使いとして飛び回る私しかいない!なんて美しい秩序!すべてのマジックリン ピカッと輝くシート[8枚入り]に祝福を!!

そうこうしているうちに夕方になり、日勤の社員たちが帰っていった。

私はあと1時間残って作業する必要があり、私とあともう一人いる今日が初めてのタイミーさんの面倒は夜勤パートの人が見ることになるらしい。

夜勤パートを束ねている年嵩の女性私たちの引くハンドフォークに近寄ると、にっこり笑ってこう言った。

無茶苦茶な積み方をしているね。夜勤だったら怒ってた。夜勤は甘くないよ」

言っておくが、今日が初めての我々にはついさっきまで社員がほぼ付きっ切りで積み方を教えていたのだ。それを滅茶苦茶とはどういうことか。

彼女は私のパレットに乗っている商品を猛然と整理し始めた。私の頭の中で像を結びつつあった最適化された作業手順が音を立てて崩れる。

彼女が新しく創造した合理性は、なるほどよく見ると次の工程の人が作業やすいことに重点を置いたスタイルだということが分かってきた。

昼間のうちに教わったのは最も効率的パレットを埋めることに主眼が置かれていた。おそらくこれは社員パートという立場の違いによって生じる差であろう。

「わかったかい?坊ちゃん

まさか30過ぎて坊ちゃんと呼ばれるとは。しかしこの迫力には何も言えない。

もう一人のタイミーさんのほうを見て

「そこのあんたも滅茶苦茶な積み方をしてるね。これは教えた人が悪いんだね」

やれやれ、といった様子で笑う彼女は、まるで間違った教えを信仰する異教徒を憐れんでいるようだった。

なるほど。つまりこれは少数の社員実行部隊パート大勢いる職場でよくある権力闘争なのだ

マニュアル化しにくい作業の手順や優先順位を「旗」にした陣取り合戦が行われているのではないだろうか。

そういえば、昼間の内も社員パートでラベルを貼る位置など、教える内容に細々とした違いがあった。

おそらく、マニュアルで決まっていない部分なのだろう。そして彼らは「そのルールは決まっていない」のではなく「自分のやり方が正しい」と言っていた。

マニュアルの余白で繰り広げられる権力闘争

とはいえ、どちらの陣営も飯のタネなので大っぴらには相手批判したりしない。

その代わり、行われるのはタイミーなどで仕事に参加してきたひよっこたちを戦場にした代理戦争だ。

しまたここで働くならば、昼と夜とで積み方を変える必要が出てくる。

2つの秩序、昼の理性を司る社員と夜を支配するパート女王

気が付けば、私がいるのは神殿ではなくなり、ただの灰色物流倉庫だった。

仕事時間は終わり、私は家路についた。

働いているうちは元気だと思っていたが、やはり体はクタクタに疲れている。

ビオレu薬用泡ハンドソープ[やさしい甘さフルーツ香り]で手を洗い、夕食にしよう。

  • 株で食ってるけど、暴落とかで生活に窮したらタイミーでもやろうと思ってた。 なんかじゃまくさそうやな。 フードデリバリーの方が良さそう。

  • そこはバニラやろ

    • 若い女ならね。男はこういう仕事するしかない

      • 男は下駄履かされてすぐ管理職になれるからイージー

        • 今の時代は男女比率合わせるためという理由で管理職になれる女がいるよ

  • 「マニュアルの余白で繰り広げられる権力闘争」 あるある。

  • その手の肉体労働の現場はエネルギーに溢れてるからな~ しっかり歩くとよく眠れていいよね 積み方の話は割とよく分かるな スーパーでレジしてもらった時、一見すると綺麗にカゴに...

  • どの派遣先にも単純作業でマウント取ってくるやついるよな 俺がよく行ってた会社にもピッキングめっちゃ早くて作業中めっちゃ怒鳴ってくるのに駅までの道分からなくて困ってるおっ...

  • 現場でマニュアルを歪めるのは陣取り合戦だったとは面白い。 そんな合理化が進んだ職場でも先輩風吹かせるベテランは生まれるんだね。 精神的な満足感というか自分らしさみたいなも...

    • こういうのは結局後工程の人の都合の良いルールに書き換えられてるだけであって もしそこで荷崩れ事故でも起こしたら「なんでマニュアル通りにやらなかったんだ」 「なぜ勝手にそん...

      • 提案されたら検討するくらいの余裕はある上司のフリをするのはやめてください そんな上司は実在しません!

      • 倉庫作業しに来てるんだから倉庫作業程度の人として振る舞って何の問題もないよね。 事故ってもタイミーの作業員に損害賠償義務が発生するとは思えないし、マニュアル外の手段を使...

  • ジャップランドの労働環境の闇が凝縮されてる

  • クルージングパーティーしてたりして楽しそうなのに。 https://www.anniversary-cruise.com/results/summerevening/145686/

  • 仕事でよく物流倉庫に行くけど物流倉庫にしか居場所がない微低能と低能と超低能がヒエラルキーを形成してて面白いよね

  • Z世代は徴兵されて死んで欲しい

    • おお! アイ・キャント・ヘルプ・ビリーヴィン・ユー 必ず遇えると あの日から信じていた きっと呼び合う 心があれば 無限のエナジー呼び覚ます ああ、傷つけ合うまえに できること探...

  • 生産とも実利とも切り離された倉庫の民には漠然とした不安以外には何も無い その空洞を埋めようと彼らは心に神を飼う

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