2022-06-18

コンサルの件

本社機能の中枢部分は随分と前(少なくとも10年)から外部人材に担わせていて、内部で人材が育っていないことが、問題を重層的に悪化させている。

新卒入社したプロパー人材原則として店舗勤務(パート社員と比べやや格上程度)をし、2年程度で売場のチーフクラスになる。その後、優秀なのは三十代でフロア責任者クラス、四十代から五十代で店長になる。店長には店の大きさによってランクがあり、中上位の店長年収千万円以上で本社部長と同等である

このキャリアパスにおいて、概ねチーフ以上のランクでは、本人が希望すると、選抜を受けて商品バイヤーマーケティングスタッフなどになることもできる。これがスタッフコースであるしかしここで生じるのは、社内でも最上級の若手社員が売場での10年程度の「経験」を経て、本社社屋で商品マスターエクセル転記とかチラシの赤ペン校正とか、商談での付き添いみたいな丁稚仕事を一から始めるという風景である現場パソコンを使うのは日報を書くときぐらいの人間の集まりなので、エクセルを触らせれば文字型と数値型が混在するし、パワポを作らせればゴシック体原色使いのスライドになる。上を見ると、日本各地で店長を勤め上げたガハハ系の五十代社員部長を勤めている。

プライベートブランドとか海外進出とかMAとか電子マネーとかネット展開とか、そういう華々しい戦略を描くのは誰かというと、ガハハ部長では当然なく、海外系の外部コンサルなのである。大きな事業戦略的な絵を描くところから、やや個別の打ち手を立案するようなところまで、本社の頭イイ感じの仕事のかなりの部分に、コンサル各社が入り込んでいる。もちろん社員も指を咥えて見ているのではない。若手社員は、コンサルからやってきた同じく若手のメンバーと机を並べ、彼らの駆使するテクを見て学びながら「成長」する。ガハハ部長はこの間、社内調整と予算取りと人員配置が主な仕事である。この人たちは店長で鍛えられてるので案外こういうことをやらせると上手い。

一方で、コンサル各社はというと、彼らも特定会社とだけ付き合いをしているわけではない。またコンサルメンバー所属や育成を産業セクター単位で行うので、同一で競合関係の二社にアサインされることもあるようだ。情報漏れるのはここからだと思う。

委託側は、中枢を担う部署の若手は育成開始がやや出遅れ気味でリーダー店長上がりのオジサンという構造で、コンサルとやりあうにはパワーが足りない。中途採用で補強したりもするが、中途組は逆に「現場を知らない」と烙印を押されて力を発揮できなかったりもする。社内教育の場も、社長の書いた本を丸暗記する場だったりする。そんなところにコンサルは若手をどんどん送り込んできて、しかも同業競合の他社でもコッソリ並行で経験を積むからノウハウ蓄積と人材育成が進んでいく。

コンサルを呼んだ側は負のスパイラルコンサル依存が進む一方で社内育成は進まない。三十代で本社スタッフになったものスキルアップに失敗し昇進も止まって停滞しているうちに、店舗勤務を続けていた同期で上手く立ち回ったのが、フロア責任者店長といった叩き上げ幹部クラスになる。あと15年すると、さらにその中から本社にやってきて部長におさまる者も出てくるのだろう。こうした組織から自分達で頭を使って戦略立案する社員が出てくることは稀だろう。正直、漏れていく機密も元はコンサルが仕込んだものかも知れない。

  • 現代に求められる要素をクリア出来ているかはともかく、ちゃんと実務家が部長やってるだけ健全やな   IT業界のコンサルは新卒時からいっさい実務担当していないITアーキテクトとい...

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