2019-11-25

統計的差別とは?

統計的差別について考えるために、以下のA~D2パターンを考える。

パターンA

カフェチェーン店店長Aさんは、店舗イメージはあるものの、企業方針基本的に男女で雇用の枠を区別することはない。なので、バイト募集には「男女問わず」という要項を入れた。

パターンB

カフェチェーン店店長Bさんは、店舗イメージはあるものの、企業方針基本的に男女で雇用の枠を区別することはないが、女性フロント担当したら売上が上がったという経験から、Bさんの一存で今回は女性雇用したい。なので、バイト募集には「女性のみ」という要項を入れた。

パターンB2

パターンBと状況は同じだが、表向きは男女で雇用の枠を区別するわけにはいかないので「男女問わず」という要項を入れ、実際には女性のみしか雇用しないつもりだ。

パターンC

カフェチェーン店店長 Cさんは、店舗イメージはあるものの、企業方針基本的に男女で雇用の枠を区別することはないが、本社のお達しで、「各店舗情報統計的に解析した結果、売上が良い店舗女性フロントに配置している」という統計データのみが来た。そのデータを見たCさんは、Cさんの一存で今回は女性雇用することにした。なので、バイト募集には「女性のみ」という要項を入れた。

パターンC2

パターンCと状況は同じだが、表向きは男女で雇用の枠を区別するわけにはいかないので「男女問わず」という要項を入れ、実際には女性のみしか雇用しないつもりだ。

パターンD

カフェチェーン店店長 Dさんは、店舗イメージはあるものの、企業方針基本的に男女で雇用の枠を区別することはないが、本社のお達しで、「各店舗情報統計的に解析した結果、売上が良い店舗女性フロントに配置しているという結果が出たので、今後のフロント採用女性にすること」という命令が来た。なのでDさんは会社方針に従い、次回のバイト募集には「女性のみ」という要項を入れた

パターンD2

パターンDと状況は同じだが、表向きは男女で雇用の枠を区別するわけにはいかないので「男女問わず」という要項を入れ、実際には女性のみしか雇用しないつもりだ。 

雑感

統計的差別元ネタは以下。

https://researchmap.jp/jo34y74lc-1820559/?block_id=1820559&active_action=journal_view_main_detail&post_id=76675&comment_flag=1 

引っかかった部分を引用する。 

その一方で、統計的差別についてはたとえば「偏見ではなく事実に基づいているのならやってもいいのではないか」といった反応が出てきがちで、実際大澤氏もそうした趣旨ツイートをしていますしか差別かどうかを判断するにあたって重要なのは個人ではなくカテゴリー判断するということであり、そこでの判断材料事実であるかどうかは関係がありません。統計差別的な実態を含めて事実事実として示すだけなので、現実差別存在する場合統計のみに基づいた判断はそのまま差別肯定につながります

"統計差別的な実態を含めて事実事実として示す" というのがミソだと思う。

パターンB2、C2、D2は、「男女問わず」という要項に反して女性のみしか雇う気はないので差別

パターンDはどうだろうか

「各店舗情報統計的に解析した結果、売上が良い店舗女性フロントに配置しているという結果が出たので、今後のフロント採用女性にすること」という本社アクションは、統計的差別にあたりそうだ。

「各店舗情報統計的に解析した結果、売上が良い店舗女性フロントに配置している」というのが"差別的な実態を含めた統計的事実"で、「今後のフロント採用女性にすること」というアクションをとることが、"統計的差別"にあたると考える。

よって本社統計的差別をしている。では店長Dはどうか。店長Dは本社の指示に従ったまでであるので、店長Dは差別行為をしていないのであろうか?しかし考えようによっては、あくま統計的事実を用いてアクションを起こしたのは本社であるが、その支持に従った店長Dも同様に差別行為をした、もしくは加担したとも考えられる。

ちなみにここでいう差別の具体的被害というと、女性視点ならば「本当はバックヤードで働きたい人がフロントで働かされる」ということが考えられ、男性視点ならば「雇用の機会が不当に奪われている」になる。

パターンCはどうだろうか

本社のお達しで、「各店舗情報統計的に解析した結果、売上が良い店舗女性フロントに配置している」という統計データのみが来た。そのデータを見たCさんは、Cさんの一存で今回は女性雇用することにした。 

本社は確かに"差別的な実態を含めた統計的事実"をCさんに伝えたが、伝えたのみで、アクションを促すことをしていない。元ネタURLヘイトスピーチ定義では、

特定属性理由として行われる脅迫侮辱、あるいは煽動

となっている。厳密にはヘイトスピーチ差別は異なるが、もしかたらこれは煽動にあたるので差別かもしれないし、あたらないかもしれない。ただ一般的本社店長という立場パワーバランス上、それを店長忖度することを見越してのお達しだったのかもしれないし、ただの業務連絡だったのかもしれない。このへんは、実際に差別かどうかを判断するには裁判しかないのではないだろうか。つまり、「統計的事実を伝えたのみ」という言葉の裏に潜む文脈を解読しない限り、単純に差別かどうかなんて判断がつかないケースなのではないかということだ。よって本社統計的差別をしたかどうかはここでは答えを出せないものとする。

さて、一方Cさんはどうだろうか。本社が"差別的な実態を含めた統計的事実"をCさんに伝え、Cさんは「Cさんの一存で今回は女性雇用することにした  」というアクションを起こした。これは統計的差別といえる。

まとめるとパターンCでは、

本社統計的差別をしたかどうかはここでは答えを出せない(したかもしれないししてないかもしれない)

・Cさんは統計的差別をした

となる。

パターンBはどうだろうか

女性フロント担当したら売上が上がったという経験から、Bさんの一存で今回は女性雇用したい。」としている。これは統計ではなく、個人的な経験だ。本来は「企業方針基本的に男女で雇用の枠を区別することはない」はずだが、Bさんの独断女性雇用のみにしたので、これは差別と言える。

パターンAはどうだろうか


これは何も問題ない。差別も、統計的差別もない。

まとめ1(統計的差別の私の理解

統計的事実には、差別内包している場合がある

差別内包した統計的事実それ単体では、事実としての差別はあったとしても、行為としての差別にはあたらない。

差別内包した統計的事実を知ったあとに、それに基づきアクションを起こしたら行為としての差別になる(これが統計的差別)。

  - (例)「女の人は身長いからさ(統計的事実)」「だから集合写真は前に行かせよう(行為としての差別)」

文脈考慮しないと行為としての差別に当たるか微妙パターンがあり、きっとそのために裁判がある

まとめ2(差別行為を誰がしたか

パターンDは、本社統計的差別をした。店長は加担、もしくは差別行為をした。あるいは命令に従ったまでなので差別行為をしていない。

パターンCは、本社統計的差別をしたかどうかはここでは答えを出せない(したかもしれないししてないかもしれない)。Cさんは統計的差別をした。

パターンBは、店長差別をした(統計的差別ではない)。

パターンAは、誰も差別をしていない。

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