http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20100310ASDK1000610032010.html
弁護士の増員に強く反対している立場の宇都宮先生が当選したのに対して批判的である。
地方の割のよくない仕事が多い弁護士が,経済的基盤が揺らぐのを案じて,宇都宮票となった,と。
そのような地方の弁護士に対して,「司法を身近なものにするには弁護士の大幅増員が必要不可欠」とした上で,
今回の選択を「高い収入を失いたくない特権的職業集団のエゴ」と断じている。
だが,ちょっと待って欲しい。
そんなエゴでここまでの票が集まるはずがない。
「司法改革」の1つの柱として新司法試験制度が始まり,ロースクールがなければ司法試験すら受験できなくなった。
実務家教員を集めるためにだろうか,ロースクールの学費は非常に高く(高いところでは年間200万円にも登る),奨学金を借りている者が多い。一度で受かればいいが,受験に失敗すれば,それだけのコストがかかる。
司法試験に合格した後の司法修習中には,今までは準公務員として給与が出ていたが,合格者が増えたことで,次の期の修習生からは貸与制となった。貸与額は年間約300万円である。
その司法修習も,従前は2年間だったものが,1年半,1年4ヶ月と徐々に短くなり,今ではたったの1年しか期間がない。
そのような状況で,裁判員裁判が始まるなど,制度が大きく変わりつつある実務経験を積まねばならない。
後述するように,就職活動が熾烈を極める中,1年間でこれだけのことを身につけろという方が無理な話である。
よく言われる新人弁護士の質の低下というのは構造的な問題に過ぎない。
そして,弁護士として世に出る前には,さらに就職難が待ち受けている。
「ボスと1回酒を飲んだら就職が決まった」というような牧歌的な就職活動はとうに姿を消し,エントリーシートを書いて法律事務所を訪問して,というリクルートが定着した。
それまで出していなかった司法試験の成績が通知されるようになり,司法試験の成績とロースクールの格で品定めをされる。「お祈りメール」が来ればいい方で,選にもれても返事のない事務所も多い。
そのような就活事情の中,就職が決まらず,やむなく軒弁や即独を選んだ仲間もいる。事務所のスペースは借りられるが一切給与は支払われないいわゆる軒弁。弁護士登録後即独立,いわゆる「即独」。
こうして,相当程度のの新人弁護士が,数百万円単位の借金を抱え,不安定な収入状況で生き抜かなければならない状況にある。さながら多重債務者である。
なにしろ,私もそのような借金を抱えて,氷河期と言われる就職難を乗り越え,ようやく弁護士として歩み出したばかりだ。
この日経新聞の記者(平均年収1295万円)は,私たち新人弁護士の置かれている状況を知っているのだろうか。
法曹人口を増やすのは,1.司法過疎地域の解消と2.経済界への弁護士の参画という目的であった。
就職難であふれた人員が地方に就職し,司法過疎は徐々に改善に向かっている。
(もっとも,司法過疎については,日弁連が10年来取り組んでいることもあり,司法試験合格者が1000人になったころから徐々に解消しつつはあった。)
ゼロワン地域以外でも地方への就職は進み,現在では,新司法試験合格者の会員が既存の会員の数を上回る単位会もあると聞く。
経済界への弁護士の参画,特にインハウスローヤーの増員は遅々として進んでいない。
日弁連の弁護士検索で,事務所に(株式会社)と入っている弁護士を調べると,359人の弁護士が引っかかる。
このうち,新司法試験制度が始まった頃の登録番号である36000番台以降の弁護士は155人。
正確な統計ではないが,新司法試験が始まって約5000人の弁護士が増えて,約150人しか企業が弁護士を受け入れていないということになる。3%。
新司法試験が始まって3年で150人ということは1年に50人。そのために,合格者を3000人にすると言っていたのだとしたら,お笑いぐさである。
経済界の肝いりで始まったロースクール制度だったはずなのに,このていたらくである。
そうすると,ここまで法曹人口を増やす必要があったのか不明である。
よくロースクール制度は詐欺だ,などと主張する受験生がいるが,法曹人口増加論ももっと検証されるべきではないか。
そもそも,弁護士は,司法研修所での研修を終えたからといって一人前になるわけではない。
イソ弁というOJTシステムがあったからこそ,今までの質を保ってこれた。それが,OJTの窓口である各法律事務所では増加した法曹人口を吸収できていない。
そのような現状があるのに,弁護士をさらに増やせばいいんだという論には賛成しかねる。
OJTも満足に受けられない質の悪い弁護士が増えて,市民の基本的人権は守られるのだろうか。
これまで見てきたように,現状では,法曹人口増加論のすべての負担が,若手弁護士に押しつけられているのである。
以下ソース
日経新聞の年収 http://www.ganvaru.com/cat_12/ent_8.html
ロースクールの学費 http://laws.shikakuseek.com/expenses.html
司法過疎が改善しつつあること http://www.nichibenren.or.jp/ja/special_theme/data/zero_one_graph.pdf
日弁連の弁護士検索(ビル名等に株式会社と入力する) http://www.nichibenren.or.jp/bar_search/index.cgi
http://anond.hatelabo.jp/20100311174458 受かってから怨嗟の声をあげるなw と現ロースクール生は思う。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100416ddm041040007000c.html 司法修習生に対する給費制度の廃止に対して,日弁連が対策本部を設置したというニュース。 これの解説を試みるのと同時に,問題提起...
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100416ddm041040007000c.html 司法修習生に対する給費制度の廃止に対して,日弁連が対策本部を設置したというニュース。 これの解説を試みるのと同時に,問題提...
それより日弁連てさあ なんでああ変な政治運動してる人ばっかりなの?
実社会に接してない事と検察と対峙する立場だから 頭がおかしい人が量産されるのもわかる気がする。 教師とおんなじだよね。
という前提自体おかしいのに…不思議な連中だ。
医学部の学費の低廉化の話はしないくせに、何故かロースクールの学費にはこだわるんだよな、こういう人って。
司法修習生の給費について。 給費か貸与かとゼロか百かみたいな話は硬直的じゃないか? 月20万として10万給費10万貸与とかにすりゃあいいじゃん。 他の収入の手段を禁じておいて全額...
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