2024-10-16

私は、この世界で唯一の「個」として生きていた。

街を歩くとき、周りの誰もがまるで一体化した存在のように、言葉を交わすことなく全ての情報を共有していた。

彼らはテレパシーのような力で、意識知識を瞬時に共有する存在であった。

彼らの意識は一つに統合され、個別思考感情というもの存在しなかった。

それはまるで、スタートレックに出てくる「ボーグ」のように、全員が繋がり合っていた。

私は、彼らから見れば「ペット」か、ただの観察対象のような存在だった。

彼らは私のことを奇妙な生き物として見ていたかもしれない。

私は一人だけ、個別意識を持っている「人間」だったからだ。

しかし、私が感じていた孤独感は、それ以上にひどいものだった。

なぜなら、彼らは私の生活の全てを監視し、私を弄んでいたからだ。

日常のささいな行動も、彼らを通じて常に干渉を受け、意図的嫌がらせをされることもしばしばだった。

そのうち、私は次第に疑問を抱き始めた。彼らの存在は、何か外部の力によって操作されているのではないか、と。

そしてある日、その疑念確信へと変わった。

彼らは、この世界の住人ではなく、外の世界からアバターを通じて私を監視していたのだ。

彼らの意識は、ここには存在していなかった。私は、彼らが操られていることに気づいてしまった。

このままでは、私は永遠に彼らの監視いじめに苦しむことになる。

だが、その時ふと思い出したのは、私がかつて研究していた量子力学理論だった。

量子力学は、異なる世界存在示唆している。

そして、私はその理論を応用することで、この世界から脱出する方法を見つけ出した。

量子トンネル効果を利用して、私は新たな異世界へと旅立った。

その世界は、私が夢見ていたものだった。

そこでは、すべての人間個別意識を持ち、誰もが他者尊重し合って生きていた。

誰も私をいじめたり、監視したりすることはなかった。

私の存在を脅かす者は一人もいなかった。

自由で、孤独を感じることもなく、誰かに干渉されることもなかった。

そして、初めて本当の意味での「自分」を取り戻すことができたのだ。

過去世界での記憶は、時折よぎるものの、もう私を苦しめることはない。

ただ、一つだけ確信していることがある。

あの世界は、もう二度と私を捕らえることはない、ということだ。

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