好きな女の子が居た。
成人してるけど一目見たら中学生の男の子と間違えそうな、私より一つ年下の女の子だった。
女の子と表現するにはあまりにも男の子だった。髪は短いし、男物の服しか着ないし、一人称は「俺」だった。
増田は女だけど、男の子みたいだから好きと言う訳では無かった。
ユーモアがあって人に囲まれる性質の癖、本人は若干人付き合いが苦手な所が可愛らしかった。
本人はそういう所を治したいらしくて、友人同士で遊んでいる時はいつも彼女が店員に声をかける役目を担った。
男の子みたいだけど、「髪が綺麗だね」「肌が白くていいね」なんて褒めると素直に照れる所が可愛かった。
彼女は別に男の子になりたいが故にそういう振る舞いをしている訳では無く、単に趣味でそういう方向に行ったのだろう。
好きなので、複数人で遊ぶときはいつも隣に座ったし、集合写真を撮ってると見せかけて彼女の写真ばかり撮った。
2人きりで遊ぶこともあったけど、好意が膨張しすぎているせいか2人だとうまく話せないなと思った。
結構な頻度で遊んでいたのに、あまりにも会話が上手くいかなくて「最近どう?」なんて変な問いかけをしてしまった事を思い出す。
彼女から「実は好きだった」と告白される夢すら見た。なんと2回も見た。浅はかにも程がある。
そんな感じで実際私には恋心があったけど、告げようとか、恋人になろうとかは全然考えなかった。
当の彼女はと言うと、中性的な雰囲気も相まってか微塵もそういう話題を見せなかった。
恋人はもちろん、好きな男が居るという話も、もちろん好きな女が居るという話も聞かなかった。
若い女の集まりだったから、「彼氏つくりなよ~!」なんて軽口を叩く事も多々あった。
でも本人はいつも曖昧に濁していたから、あんまり興味が無かったんじゃないかな、と思っている。
普段化粧っけすらない彼女に、フルメイクをしてフェミニンな服を着せてポートレートを撮る遊びをしたらしい。
そこに写っている白いワンピースの彼女はとてもとても綺麗で、そして確実に女だった。
服がどう、化粧がどうという部分ではない。取らされたポーズに決まってはいるものの、彼女自身がそれを楽しんでいるのを感じ取れた。
私はその写真を見てなぜだか、「いつか、彼女にも好きな男が出来るんだな。それでそれが彼女の一番の幸せなんだろうな」と思った。
彼女の中性的な雰囲気だけが好きだった訳では無いけれど、やっぱり私の中での性別が曖昧だったのかもしれない。
ありありと「女」を見せつけられると、彼女を攫って行くのは「男」でしかないのだろうと、確信した。
友人は「本当に美人だよね。この格好で居たらすぐにお嫁に行っちゃいそう」と笑っていた。
この分だとウェディングドレスがとても似合うのだろう。