確かに清潔感はあるけれど、なんだか居心地の悪い、寒々とした雰囲気の受付と待合。殺風景なわけではない。絵や観葉植物は一応飾られているのだが、なぜか温かみを全く感じないのだ。高級感はあるが座り心地の悪いソファに、昼光色の青白い照明が降り注いで余計に寒さを強調する。
初めての場所なので緊張しているせいかとも思ったが、後から理由がはっきりした。ここの院長には「病気で弱っている患者さんを温かく迎えよう」という気持ちが微塵もないのだ。こういう患者に対する本音は待合にはっきりと表れるものだ。
待っているのは自分だけ。
ヒーリングミュージックもテレビもない、ただぶっきらぼうな空調の音だけが壁の向こうから響いてくるところで、混んでいる様子もないのに15分も待たされ不安Maxになってしまった。予約制とは書いてはなかったが、やはり事前に電話した方が良かったのだろうか。
まだ大学病院のゴミゴミした待合で待たされる方がマシだと思ってしまった。待ち時間は長く騒々しいが、これほど余計な緊張を強いられることもあるまい。
一応本棚には雑誌らしきものや、パンフレットの類も置いてあって、それで時間をつぶせということなのだろうが、全てが無駄なくキチンと並べられていて、まるで許可なく触れることを禁じられているかのような様相である。
そんな不安な自分の前に登場した、仏頂面で威圧的な医師。「おはようございます。今日はよろしくお願いします」と立ち上がって頭を下げたが、返事もなく、ニコリともしない。
あれ、何か気に障ることを言ったか?いや、こういう人なのだろう、気のせいだ、などと思い込むことにした。
年齢不詳の医師は冷たく「どうぞ」と言い放ち、壁の向こうに消えた。
初診の患者に対してなにがどうぞなのかと聞きたくなったが、そこはこちらから察することにする。
診察室は普段から世話になっているクリニックとそう変わらない。
ただ、受付や待合のこれ見よがしな高級感との間に妙なギャップがあるのだ。だいたい、クリニックの内部なんてよほど特殊な処置をする部屋を除いて、テイストが統一されているのが普通だと思うのだが。
ああそうか、ここの院長はとにかく外面を気にするタイプなのかもな、などと勝手に分析してみる。
具体的にどんな診察を受けたのかを書くのは差し控える。
言えることは、かなりの「コミュ障」だったということだ。
(続く)