金がジャブジャブしている感じに、なんとなく憧れを抱いていた自分に気付いた。
自分では敬遠していたけど、そういう企業に就職しようとした後輩がいた時、それを止めようとは思わなかった。
学部卒が新卒で年収700万?結構じゃないか。世の中なんだかんだ言って、お金がないと幸せになれないよ。
合わなかったり、他にやりたい事があっても、それなりに勤めていれば転職先は見つかるから、とりあえず内定が出たら入ってみる手もあるよ。
とかなんとか。
でも、そうじゃなかった。
自分はIT業界に籍を置くエンジニアとして、自分のキャリアに満足していたつもりでも、心の奥底では、自分もラクして手に入るお金にありつきたかったんじゃないか。
その過程にどれだけ人の良心に背く行為があったとしても、お金が欲しいと思っていたんじゃないか。そう思って気分が沈む。
後輩にどう言うべきだったろうか。
君が入ろうとしている企業では、Google検索をクソまみれにするのがエンジニアの主たる業務なんだよ。
一から十まで他人が作ったコンテンツなのに、勝手にガメて広告料をせしめる。
一から十まで自分がやったことなのに、抗議されたら他人のせいにする。法律的にはグレーゾーンだと頬かむりをする。
良心はなく、法律を守ろうとせず、誰の幸せにも貢献せず、ただ会社の売上・利益と自分の銀行口座に数字が増えることだけでしか自分を正当化出来ない。
とりあえずお金さえあればいい、というだけで満足するのは、貧しい人だけだよ。
この国はどんどん貧しくなっているけど、君みたいに健康で、ちゃんと学問を収めて、学生の間に良い経験も積んだ人が、ああいう企業のために人生を使ったら、この国はもっと貧しくなってしまうよ。
お金は稼ぐけど、それと同時に世の中を便利にしたり、難しい問題を解決することを、バランス良く行っていかなければいけないよ。
人のポケットからお金を掠め取るようなことに何年も夢中になっているうちに、何ひとつ世の中が良くなりませんでしたでは、君の後輩、子ども達に軽蔑されてしまうよ。
というような、妄言めいた、ジジむさい説法が、サイバーエージェント等の就活サイトの、キラキラした文言に比べて魅力的に響くとは思えない。それも情けない。