今はもうサービス終了してしまったあるMMOで、あるプレイヤーに告白された。
男だと思われていたらしい。
そのMMOは文字チャットが主流で、音声チャットは一部の廃人プレイヤーが使ってるぐらいだった。文字しかなければ、性別は偽りやすい。
とはいえ、自分はネナベをやるつもりは毛頭なく、なんならサブキャラは女性だった。もともとネットゲームデビューはPSO(DC)で、あの作品は性別もキャラ性能の一部だったので、必然、「使いたい性能で性別が決まる」文化であり、中でも凝り性の人々は、使用キャラによって口調を変えるぐらいのことはやっていた。
使用キャラはプレイヤー自身のアバターではない。けれど、女性キャラが「俺」と言ったり、男性キャラが「あたし」と言っていると、口調とビジュアルがなんとなくそぐわない感じがする、だから操作キャラに合わせる形で喋り方のほうを変えてしまう。
そんなスタイルに慣れ親しんでいたせいで、男性キャラを操作している時は男性として違和感がないように、女性キャラを操作している時もまた違和感がないように、喋る癖がついていた。
漫画の顔と吹き出しの組み合わせを考えるようなものなんだと思ってた。その「吹き出し」のイメージも、きっとPSOのせいだ。
そしたら、男性キャラでプレイしている時に知り合った人から、見事に勘違いされてしまっていた。中身の性別を隠してはいなかったけど、狩りやらに出かける時にわざわざ「中身は女なんですよ」なんて言わない。そのまま何度かパーティーを組んで遊んでいるうちに、惚れられていたらしい。
あまり人が来ないエリアに呼び出されて、好きだと言われた。中身が好きだと。
大慌てで中身は女だと説明したが納得してもらえるには時間がかかった。結局、ふだんの自分の口調で喋るように修正し(これが私にはつらかった。ドラゴンボールの悟空の吹き出しに「あたしも宿題やってないよー><」と書き込むような辛さなのだ)、なんとか受け入れてもらった。
彼女にとっては、操作キャラはアバターで、当然プレイヤーとキャラクターの性別は同一、ということだったんだろう。
そのMMOも女性キャラ比率が高く、その中には当然、多くの男性プレイヤーが含まれていたと思うのだが……もちろんその逆だって。
今思い返すだけでも、異性キャラを使っていたプレイヤーを両手で足りないほど思い出せる。
私のようなスタイルのプレイヤーにとって、文字チャットはキャラクターの見た目に合わせて内容を変えるものだ。
その口調も、時には考え方すらも、自分自身とイコールではない。
誰もがそうしているとは言わない。けれど、自分の多数の操作キャラの間に人間関係すら構築し、例えば兄と妹をそれぞれにキャラメイクする遊び方だって確かにある。そして私は今でもPSO2で、男性キャラと女性キャラそれぞれをちまちまと育成している。
もうチャットに明け暮れるほど遊べてはいなくて、フレンドも作らない万年ソロだけれども、もしもチャットする機会があったなら、それぞれに口調は違ってしまうと思う。