「提督、提督が僕のために大型建造で三隈を迎えようとしてくれているのは嬉しいよ。でも、大型建造は資源を消費しすぎるんじゃないかな。通常建造で迎えられる鈴谷や熊野だって航空巡洋艦になれるんだし、彼女一人のために艦隊に迷惑をかける訳にはいかないよ。そのうち…そう、そのうち余裕ができたら、その時また三隈を迎えに行こうよ」
「あ、ああ…そう…だな(通常建造で鈴谷熊野が出ることを知らなかったなんて言えない…)」
十八駆逐隊のモーレイ海での任務が不調なので、最近提督さんは苛立ち気味。
特に不知火ちゃんはなぜか初戦で大破することが多くて、そのせいで提督さんに目をつけられてるみたい。
レベリングを怠っていきなり北方海域に出した提督さんの自業自得なんじゃないかなって思ったりもするんだけど。
まあ、大破したらちゃんと撤退させてくれるだけうちの提督さんはまともな方なのかもしれないけどね。
……ああ、とうとう手が出ちゃった…。大丈夫かな不知火ちゃん…。
「テメェがっ、ちゃんと避けねぇからっ、今日も撤退しなきゃならなかったじゃねえかよぉっ」
「なんで毎回毎回テメェばっかり被弾するんだよ、他の連中はしっかり避けてるじゃねえか、あぁ?」
不知火ちゃんは気丈よね。
「ほんとにわかってんのか? モーレイで羅針盤の野郎が南に行ってくることなんてめったにないんだぞ、折角のチャンスをふいにしやがって。だいたい弱ぇくせにちっと喰らったくらいで30分も風呂に入ろうなんざ贅沢なんだよ、わかってんのか? タイムイズマネーなんだよ! それにな、ドックは二つしかねぇんだ、そのうちのかたっぽをテメェなんぞに30分も占拠されたら邪魔でしょうがねぇんだこのうすのろ!」
さらに平手。だんだんお説教の内容が理不尽になってきたよ。そもそもそんなに時間が大事ならドック拡張するなりバケツ使うなりすればいいのに。貧乏性なんだから。倉庫にバケツが千杯以上貯まってるの、ちゃんと知ってるんだよ?
「うるっせぇ、何だその目は、なんか文句でもあるのか!?」
「申し訳ありません、申し訳ありませんてバカの一つ覚えみたいに繰り返しやがって、それだけ言ってりゃ許してもらえるとでも思っているのか? テメェホントは俺のことバカにしてやがるんだろ!」
「いえ、そんなことは、断じて」
「うるせぇ、テメェの顔にそう書いてあるんだよっ!」
ああ、ついに足が出た。お腹に十六文キック。いや、そんなになかったな。提督さんのはせいぜい十文くらいだったっけ。割と小柄なんだよね、提督さんって。それでも一応男の人だから、それなりに力はあるみたい。不知火ちゃん、バランス崩して倒れちゃった。
「この、いつもいつも人を小馬鹿にしたような態度をしやがって、この、この」
不知火ちゃん、気丈なのはいいんだけど、感情があんまり顔に出ないからけっこう他の人に誤解されやすいんだよね。もう少しお姉ちゃんみたいに笑ったりすればいいのに。可愛いんだから。今みたいに鬱憤晴らしに蹴られ続けてる時なんかは、ガマンしないでうめき声くらい上げてもいいんだよ?
「申…し訳…ありま…せ…ん」
……不知火ちゃんも結構不器用な性格なのかもね。あ、とうとう動かなくなった。提督さんもそろそろ気が済んだろうし、ここらが潮時かな。
「あぁ? あ、あぁ…チッ、今度は気絶したふりかよ、まあいい。おい、まるゆが上がったら次はこいつを風呂に突っ込んでおけ。モーレイはまた明日だ。他の奴らは補給船狩りでも手伝ってこい、ぼやぼやしてるんじゃねえぞ!!」