もし、必要とされるものが苦も無く手にはいる社会になったらどうなるであろうか。
食べ物、睡眠、快適な居住空間。次に何を求めるであろう?寝て食って増えるのだけが人間の本分であろうか。
生き物は環境がよくなれば増えるし、悪くなれば減る。悪化した環境下では生物の個体の寿命は長くなり、良い環境下では世代代謝が進む。なぜそうなるのかはsirII遺伝子に聞いてくれ。ただ事実として、そのように振舞う生物が現在の地球上の生き物のほとんどを占めている。
日本における少子高齢化という観測可能な実態は生存環境が悪化していることを示す。こんなに豊かなのにと認識するかもしれないが、それは誤解である。社会動物である人間はその社会、環境にあらたに経済という尺度を持ち込むことに成功しているからだ。
経済などというのは数字記号や信用などという概念のやりとりのみでそのほとんどの取引は実態の則さないものであるが、これを最終的に住環境や食物環境に連動させることで、経済が実環境として認識される。
経済環境が悪化は実際の食物の豊作、凶作にかかわらず飢饉を呼び起こし、災害などで居住環境を奪われたわけでもないのに住環境を奪われなければならない。それをルールとして採用し群れの統制を維持している。
アリのような社会性をもった昆虫は他の個体を制御するためにリリーサーフェロモンをつかうことが知られている。社会性動物から、さらに経済性動物になった我々人間はどうやら経済環境をそのリリーサーフェロモンとしているようだ。さらに経済は政治という女王アリの影響を大きくうける。経済は統制に必要なプライマーフェロモンでもあるのだ。
ある種のアリは個体数が増えると2割ぐらいが兵隊アリになって他の新天地を目指す。しかし人類にもはや新天地はない。増えすぎた個体が他の群れと戦って追いやるぐらいしか手段はない。戦争だ。人類の歴史は有史以来戦争の歴史だ。いや、単細胞生物の時代からそれは生存競争として繰り広げられてきたことだ。
だが、戦争を放棄した種族がある。彼らは環境を良好に保ちつつも仮想環境である経済を、繁殖世代に対して局在悪化させることでどうやら人口統制に成功した。環境がよくなりすぎれば増長するし、悪くなっても制御が効かない。意図的にやられ意図された通りの結果にはなっていると思うが、不安は際限ない。これでいいのだろうかと。
この種は何を目指しその種を勃興すべきや継続すべきや。
奪い合う豊穣もわかち合う恵みも月日の過客。
何を伝え残すかが本分かと思われどげにいみじき世にあふるるもののおかしきやあらん。
閑居し不善をなすものばかりなりけり。
人が世におかしきは何を求むべきや。