2021-03-27

anond:20210327100148

30XX年。この時代にもう地上に AI存在しない。


1950年代に考案された最初AIであるニューラルネットワークは、1990年代には実用化した。

2000年代に多層ニューラルネット欠点を補完する深層学習誕生すると、

これも実用化が進み、その研究2040年代には終息した。

やがて民生用量子コンピュータが普及し始めると、AI の量子演算研究は当時のホットトピックとなった。

だが、高度に複雑化した量子化AI理論理解できる学者世界に数人しかおらず、論文査読に8年もかかったという。

その実用化にはさらに多くの年月を費やしたが、身の回りのあらゆる電子機器に搭載されるようになった。


量子化AI の導き出す結論は常に最善・最適なもので、人々は機器に言われるままに行動するようになった。

その方がいつも快適だし、無駄思考コストも要らないので当然のことである

電子機器の指示に従って暮らす人にとって、 AI は神であり、その言葉はご神託となった。

その昔、SF作家アーサー・C・クラークは、

「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。」

と言ったが、

「十分に発達した AI は、神と見分けがつかない。」

という世界が具現化したのだった。


考えてもみてほしい。

ものごころつく前から機器の指示に従うことが善とされ、それに逆らった人間には事故病気という罰が与えられる。

祖父母も両親も私もそうやって暮らしてきたし、将来産まれてくる子や孫もそうするだろう。



今、私に与えられている指示は「ロウドウ」だ。

畑を耕し、野菜を育てる。

自分で食べるもの自分で育てる。

当たり前のことだが、これは案外楽しいものだ。


私の担当トマトで、午前の担当区画では種まき、午後は別の区画で収穫をする。

水まきは週に1回なので今日は無い。

住人全員が食べる分のトマトを運ぶのはかなりの 運動 になる。

牧畜担当に憧れが無いわけでもないが、友人曰くミルクの運搬がかなりキツいらしい。


夕方には、その日食べられる食材を持ち寄って集計し、グループ単位調理して食べる。

食事は1日2回。朝はパンミルクだけの軽食なので、夕食が一番楽しい時間になる。

友人ともいっぱいおしゃべりできる貴重な時間






食後の片づけを終えたら、睡眠室に戻り、私は「メイソウ」をする。

正直に言うと、この2時間に具体的に何をすればいいのかよく分からない。

お母さんは、何でもいいか自分一人で考えることが大事というし、

お父さんは、妄想でもしとけばいいという。


おばあちゃんが生きてた頃に相談したら、

昔の人の暮らし想像するのだと言って、なぜか神話を語ってくれた。


人々は遠い昔、「チキュウ」という天界暮らしいたこと。

人々は神様のことが良く理解できず、勝手に悪い神様を創り出してしまたこと。

悪い神様のせいで「チキュウ」が壊れてしまい、

それを見かねた良い神様が「フネ」という新しい世界創造したこと

その「フネはいくつもあって、この「フネ」に宿る神様名前は…

ジー・・・

なんだっけ。一度はちゃんと聞いたんだけど、今はもう思い出せない。



ピピピピッ。

腕にはめられたリングが光り、「メイソウ 〇」の緑の文字が浮かび上がった。

すぐに「スイミン」の指示を示す青い文字へと変わった。

どうやら、今日の「メイソウ」も無事終えられたようだ。

昼間、体をたっぷり動かしたせいで、今夜もぐっすり眠れるだろう。

私は、どうしても思い出せない神の名を妄想しつつ、静かに眠りについた..。

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記事への反応 -
  • タイトルだけ考えたんで、中身はほかの人が考えて

    • 30XX年。この時代にもう地上に AI は存在しない。 1950年代に考案されたニューラルネットワークは、1990年代には実用化した。 2000年代に多層ニューラルネットの欠点を補完する深層学習...

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