「好きな研究を安定して行うために、別の収入源を探します!」とか言ってる人をSNSでしばしば見かける。
私は個人的に、こういう人間には2つのタイプがあると思っている。
1つは「非研究職の安定した職に就き、余暇として研究に勤しむ、いわゆる『在野』タイプ」、そしてもう1つは「研究に関する何かを発信して収益化しようという『研究を収益化』タイプ」である。
個人的には、圧倒的に前者をおススメする。
いや、むしろ後者を圧倒的におススメしない。「研究を収益化」の難易度をお前らはナメすぎだ。
暮らしていける、というのは、30年とかそういう単位の年月の間、毎年数百万の利益を上げ続けるということだ。
そんなことどう考えても簡単ではない。
と、書いたものの「研究を収益化」は実はそこまで難しくない。その収入だけで食っていくことだって現実的だ。
なぜなら、ほとんどの大学や企業、国研の研究者は、「研究を行って成果を出すことで稼いでいる」、つまり「研究(活動)を収益化」しているのだ。
ポストをめぐる競争は激しいとはいえ、「研究を収益化」して食っている人間は数十万人単位で存在する。
しかし、SNSで「別の収入源を探します!」と宣言しちゃう人間が言っている「研究を収益化」はもちろんこの正規ルートではない。
いわゆるブログや動画配信、オンラインサロンや支援サービスなどのネットコンテンツからの収入、グッズ展開、本の執筆や講演会、といった、研究をテーマにしたコンテンツからの収益化を指していることがほとんどだ。
なんで現実的な正規ルートがあるのに、そのような未知のルートに飛び込むのか。
恐らくそのような人々はわかっているはずだ。
そう。正規ルートの競争は激しい。研究者としての絶え間ない鍛錬が求められる。
常に研究について批判的な目で評価され、業績欄を他人に精査され、申請書に不採用を突き付けられる日々を送らなければならない。
これは正直きつい日々だ。こんな思いをしないといけないなら、なんか別なルートで食っていくことが出来ればいいのに…と考える気持ちはとてもよくわかる。
一定数の博士課程の学生がこの考えをこじらせ、妙な収益化活動に精を出してやがて研究業界からはいなくなってしまう。
一度立ち止まってよく考えてみてほしい。
研究紹介動画の配信とかグッズ販売でいったいいくら稼げると思ってるのか。
月2-3万じゃない。食っていくなら月数十万を継続的に稼ぐんだ。ワンクリックで0.05円のアフィリエイトでほんとにそんなことが可能なのか?
「研究」というマイナージャンルに興味を持ってお金をかけてでもそのコンテンツを見たい聞きたいと思ってくれる人が何人いるというのだろうか?しかも、数十年単位で。
それに、世界には「博物館」や「科学館」という研究成果の発信基地のような施設が存在する。数百円で一日楽しめる施設が全国津々浦々に存在するのだ。このクオリティとコスパを相手に戦うのだ。
結局正規ルートでの戦いを避けた院生は、ごくわずかな収益を上げるために大半の時間と労力を費やし、正規ルートでの「研究を収益化」の道を自ら閉ざしてしまう。
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