たぶん、確実に初恋だった
恋愛なのか依存なのか憧憬なのかは分からないし、正直どちらでもいいとは思うが親友がとかく好きだった。
一緒に帰りたい思いだけで、自分の家とは真逆である親友の家まで送ったし、お小遣い制でもないしさして裕福でもない家庭であるのに、たまに祖母からもらうお小遣いをやりくりして、親友の誕生日にあの子が好きそうなテディベアを送ったりもした。6000円くらいだった。
親友が他の友人と話すのも嫌だったし、一時期女子中学生らしくグループがごたついたとき、親友が私のそばから離れることが嫌すぎて何度か家で吐いた。
自分が男だったら親友に告白していただろうし、親友が男だったとしても私は告白していた。
ただ、あの時の私は本当に親友を好きだった。
転校生としてやって来た親友は、はじめクラスの中でもパリピ寄りの女に囲まれていたのだが、生来そこまで明るくもない親友は結局、クラスでもオタク側であった私と何人かの男女のいるグループで落ち着いた。
運動もさして得意ではなく、同じく運動ができない私と二人で逆上がりできない組として先生に面倒を見られていたりもした。
勉強のほうは、私は少しばかり得意だったのもあって親友に割合の計算を教えたり、並列と直列の問題を教えたりとなにかと面倒を見たりしていた。
運動も勉強も苦手な親友だが、絵は格段に上手かった。私もちょっとは得意かもと思っていたのだが、親友の絵を見たときにあっさりと打ちのめされた。そして一気に彼女に興味を持ったのを覚えている。
思い返そうとしても、思い返すだけのエピソードなんてなかった。
自転車で山まで走り回ったり、海に行ったり、桜を見たり、祭りに行って花火を見たりした。
中学生のころに目覚めた恋愛感情は、いつしか友人として親友の隣に居られたらいいに変わる。高校生となって親友と別の進路を選び、私は県内の大学へ、親友は県外の絵を学ぶ専門学校へ行くことになってからは、あの子が健やかに、幸せに生きててくれたらいいと思っていた。
こんな話を思い出したのも、今日で私が彼氏と付き合ってから三ヶ月が経ったからだ。
親友のことを思っていたのもあり、元からメンヘラなのもあり、顔も性格もブスな私は思春期に【同性を好きになってしまった】ことから段々とメンヘラが加速していった。
女神行為をして承認欲求を満たしたり、セックスまでは結局できなかったが出会い系で知らないおじさんに処女を捨てようとしたこともある。おっさんと付き合ってテレフォンセックスして、突然LINEで送られてきたおっさんのちんこにびっくりしたりもした。
まともな恋愛遍歴が一切ないまま20歳を越えて、なぜか、今の彼氏と出会って、惚れられた形で付き合った。彼氏は上記のことをすべて知っている。それでも好きだと言ってくれる。なんでこんなクソ女を好いてくれるかは全く分からない。
たった三ヶ月、されど三ヶ月。
ちゃんと顔を知っていて、会ったことがあって、まともな職に就いていて、向精神薬を飲んでもいなくて、未成年とセックスしたりしようとしたこともない人と、こんなメンヘラが付き合えたのは本当にすごいなあと思う。
この時期が一番いろいろあるんだよ、などと言われたりもしたが付き合う前に、お互いの弱い部分や私の過去なんかも話してあったために、今はまだ大きな壁なんかにぶち当たったりはしていない。
それどころか付き合いだした当初、好きとか分からなかったのに今じゃ同じだけの熱量で彼氏に対して思っているのだから、恋ってすごいなあとも。
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私はあの時、あなたが一番好きだった。
上から目線で最低な女だけど、何もできない君がかわいくて大好きだった。勉強も運動もできないのに、心を動かすような素敵な絵を描くあなたが大好きだった。
いまはもう、遠く離れていて会うこともできない親友。私はあなたが幸せであることを、今だって願ってます。ごめんね、勝手に願われても面倒だよね。大丈夫だよ、一生君には言わないから。
私はずっと、彼氏のことを好きでいながらも心のなかに親友の影が残っていた。この問題、分かんないよと並べた机の向かいで聞いてくる親友がずっといた。
けど、ここで話せてようやく親友の幻影にお別れできそうである。
今までありがとう、これからは本当に友達として仲良くしてほしい。
私の大切な親友へ。