試験開始前、試験官からは始まったらいかなる場合でもトイレに行ったり途中退出はできないと案内があった。
こちらもそのつもりで、会場に着く前と着いた後と2回トイレに行った。棚田先生の動画に従い、コーヒーなどのカフェインもとらないようにした。
ところが、だ。
この時点でトイレにはいけなさそうだったが、仮にここで手を挙げていたらワンチャン違ったのかもしれない。
統計から解くつもりだったが、意識が完全に第二の脳に奪われた。考えることができなかったため、簡単と思われる5問免除をそのまま解いた。
このコンディションで得点しやすい業法には迎えず、法令上の制限でいったん落ち着くことにした。
が、落ち着くどころか波が来た。まだ開始17分しか経っていない。なぜ、こんな大事な時間なのに、私の腸はブレイクスルーしようとしているのか。括約筋に全集中した。
ここまでくるとガスを出したからといってどうにもならない。いや、ガスを出したつもりが、そうでないものも確実に出てしまう状態だった。
しかし、1年間の努力が……。棄権してトイレに駆け込めば、どれだけ天国が待っているだろう、それほどの苦痛だった。気温がそんなに高くない日なのにガンガンに冷房の風が当たる席だったことも呪った。
しかし、第一波はなんとか超えられた。執拗な攻撃をなんとか耐え切ったら、しばしの凪があった。
その後も波が何度かあったが、最初に比べればまだ深呼吸をして筋肉を使えば耐えられた。そして、問題自体は理解できていなくてもなんとか全問回答した。
ところが、14時50分から再び耐えきれない衝動。最後の大腸のあがきだった。
あと10分なのにもう耐えきれない!
何度か心が折れかけた。問題文を適当に読んだり、貧乏ゆすりをしたり、意識を波からそらそうとした。見直す時間はなかった。
残り5分の案内からは、無になって300秒を数えた。
しかし、回答用紙が回収されるまでは席を立てない。後生だから早くしてくれー!とバッファローマンのように心で叫んだ。
部屋を出られるようになったら即トイレと思ったが、廊下が混んでいてすぐにいけなかった時は、天はなぜここまで試練を与えるのかと思った。