短時間に複数回通知があったので親戚か部屋の管理会社とかかな?と思って出たら、10年ほど連絡を取ってない昔の男からだった。
私の番号は学生の頃から変わってないので、向こうが知ってるのはおかしなことではない。が、唐突すぎて、当時どういうテンションで会話してたかもはや思い出せない。懐かしさを感じるよりも、え????なに?????感が拭えないままとりあえず会話に応じる。
誰かの訃報でも聞かされるのかと思ったら、特に用事はないようだった。今どこに住んでるのか、どんな仕事をしてるのか、結婚してるのか、子どもはいるかなどを尋ねられる。これらの情報を何ひとつ知られてないぐらいには疎遠だ。
緊急の用件がないなら、「私が独身のまま、まだずっとあなたを忘れられずに過ごしている」ことでも確認しにきたのだろうか。残念ながら既婚だし、今の私はもうあなたの存在を必要としていない。
学生の頃、私はこの人にずいぶん長く片思いをしていた。中学で一時期両思いだったものの特に進展がないまま終わり、でも私はずっとやんわり彼が好きで…みたいな。大学の時に地元の飲み会で再会してからはまた仲良くなり、相当な時間を一緒に過ごした。でも、私が告白しても応じてもらえることはなく、セフレみたいな雑な関係しか持てなかった。
全部、昔々の話だ。
社会人になって私が地元を離れてからはほぼ没交渉。向こうは随分前に結婚して子どももいる。
もう会うことはないと思っていたけど、彼の中で私はあの頃のままのようだった。
むしろさらに都合よく美化されてる。(私も私で都合よく腐化してるだろうけど)思い出話に混じって「ずっと好き」「俺の特別」「また会いたい」みたいなことを照れくさそうに語られた。
ずっと好きならこんな疎遠になってないだろうよ。
恐らく、奥さんとの関係がうまくいっていない。他にもいろんな要因が絡んで精神的に参っているのだろう。「ずっと俺のことが大好きな、俺の理想子ちゃんに癒されたい」というところか。
正直、困る。困るっていうかうっすら怖い。「私もずっと好き。特別な存在だよ。会おう」と返ってくるとでも思ったんだろうか。
昔々の私なら、そう言ったかもしれない。彼からの突然の電話に舞い上がったかもしれない。
でも残念ながら、彼が見てるのは私の蜃気楼だ。彼が思い描く理想子ちゃんは、もうこの世のどこにも存在しない。
10年ぞ。あなたと私の関係はもうとっくに終わっている。細胞もすべて入れ替わっている。
今の君のしんどさを救うのは、美化しまくってもはや原型を留めてない過去の私じゃない。目の前にいる家族とか、これから出会う他の誰かだよ。
その男の中ではセフレみたいな雑な関係しか保てなかった、つまり、すべてを許容してくれていた増田で止まってるんだろうな。 それは好きがなせる業なんだろうけれど、終わった瞬間...