2024-09-02

『追燈』に思うこと

関東大震災にあわせて岡田索雲『追燈』が無料公開され、読んだ

綿密な取材に基づいて描かれたことは間違いなく、作者の強い意志を感じる

デマ集団心理の恐ろしさ、そして人種差別暴力への抵抗

そしてこれらが「なかったこと」にされつつある現代社会への警鐘

この作品を受けて、小池都知事の「追悼文」送付拒否糾弾する動きも生まれている

紛れもなく傑作だと思うが、二つの血が流れる自分には、なんとなく胸に引っかかるものがある

どこかこの漫画が「ずるい」と感じてしまうのだ

作中、朝鮮人(だけではないのかもしれない)が虫けらの如く殺される場面で、

自分の素朴な心は「日本人、最悪じゃん」と叫んでいる

なんなんだよ日本人、俺らを差別しやがって、デマに踊らされてよ、絶対に許せねえ

日本人は最低な奴らだ!」

しかしその怒りは、この作品が持つメッセージの前にすぐかき消されてしま

過去を恥じ入り、反省し、民族差別撤廃を誓う、やさしく繊細な日本人

この漫画を読んで胸を痛める彼らを、友人たちを、どうして憎むことができるだろう?

あくまで最低なのは「かつての日本人」であり、現代を生きる彼らではないのだ

…こうして自分の怒りは、なかったことになる

先日、フワちゃん騒動があった

彼女が「暴言を吐いてしまった女性芸人に直接謝罪したい」旨をツイートすると

「謝ったら相手は許さざるを得ない、それはずるい」と非難され、さら炎上していた

自分はこれと同じ感覚を『追燈』に見ている

わたしたちは、朝鮮人への卑劣行為を自ら明らかにして謝罪します けっして忘れません

それなら、自分はなにに腹を立てたらいいのか? 水に流せない自分が悪いのか?

『追燈』作者の国籍はわからないが、これは「日本人のための」作品だと強く思う

真摯反省し、謝罪すれば許される、というような…

日本以外の読者をどこまで想定しているのかはわからないが、

少なくとも自分のように、苦々しい思いで読んだ人間もいることを残しておきたかった

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