中学のころ地方都市の私立中高一貫校に入学した。特に進学校でもなくたいした勉強をしなくても入れる。地元の中学より制服がオシャレとか自転車通学できるとか、その程度の動機で選んでいた。後、スポーツが強かった。
特に野球は強く地方大会で優勝するレベルにあって非常に人気だった。おもてだった野球特待生はいなかったが、有望な野球少年はほぼ顔パスで入学できた。しかし高等部の野球部はさらに強豪校で県内外から人材を集めていたので、中等部の野球部メンバーは進学しても2,3人しか入部を許可されない。
そして、うちの学年には天才がいた。俺は野球部ではなかったので彼の実力のほどは知らなかったが、体育の授業でマット競技とかハードルの授業でおそろしいバネを披露していた。もちろん、うちの高校へのエスカレーター枠とみなされていた。
しかしそいつは素行に問題大有りだった。授業中の態度は悪く、気の弱い先生など標的にしていじめていた。一人の先生は完全に病んでしまっていた。
また中学生にもかかわらず女癖が本当に悪かった。相手が妊娠中絶とかその領域の話もあった。事態が大事になったら何故か女子生徒の方が地元の公立中学に「転校」させられた。そいつを何としても野球で高校に進学させるためだったのだろう。
ただ、最後に手を出された女子生徒の両親は一歩も引かず行政に通報した。先生たちも男の方を庇いきれなくなってそいつが退学処分になった。かつて転校した女子たちは復学させるという噂もあったが、結局一人も戻ってこなかった。
ここからは完全に伝聞になるが、そいつは別の高校で野球をしたらしいが、事態が急変する。化けの皮が剥がれ始めたのだ。中学までは発育がよかっただけで高校になると成長が止まり始めた。はっきりいって学校が色んなものをゆがめてまで守る選手ではなかったのだ。
遅すぎる話だが、周りの大人は何故彼の才能が瞬間的なものだということが気づかなかったのか、あったところで特別扱いして良いことなんて一つもなかったのだ。
今母校はどんなにスポーツができても、ある程度勉強しないと入学できなくなったそうだ。あの当時の不幸を糧にして変わってれば幸いである。