というわけで、両替等のお金○十万をまず作ったら、残りの現金が売上金のはずなのだが、残金がどう見てもデータ上の売上額よりも少なかった。けれども、両替機に入れとくお金の金額は不変なので、そういう結果になったら仕方ないので、本部に報告の上、集計表の備考欄に不足金が発生した旨を書き、△不足金を含めて計算して、それも記入する。そして残金のみを送金とする手順だった。
ところが、癖つよ先輩は全く納得してくれないのだ。
「それは絶対おかしいよ! だいたい、両替機に何でそんなにお札いっぱい入れとくわけ? どう考えても無駄でしょ。コインランドリーで100円を千円に両替するなんてあり得ないの、わかるよね!?」
あまりにも堂々と大声で言ってくるので、こっちが間違えたことをしたような気がしてきてしまう。だがここで大人しく言い負かされたら絶対に悪い結果になることだけはわかる。なので、
「すみません、マニュアルを確認します。そしてちょっと考えさせてください」
と私は言って、マニュアルを熟読した。だがやっぱり、どう考えても両替等用のお金は○十万円と不変であり、両替目的でもない限り触っちゃいけないのは確かなのだ。自分の認識のどこが間違っているかというより、癖つよ先輩にどう説明責任したら理解してくれるのかと考える時間がだった。
「やっぱり、売上が足りないから両替金で補填するのはダメだと思います」
「いや、絶対おかしい! それは絶対におかしいよ!! 本部に送るお金を減らせっていうの!? 売上はちゃんときちんと合わせて送金しなくちゃでしょ!!」
そういう訳で本部に電話して、事情を説明して指示を仰いだのだが、やはり私の認識は間違っておらず、両替金等○十万円を作って両替機に入れたら残金をそのまま売上金とし、本部に送金するということだった。
本部の社員さんと話しているうちに私もうっかり喪いかけていた正気を取り戻した。電話を切り、
「やはり○十万は絶対不変で、残金が売上金額に足らなくても○十万円のなかから補填するのは誤りです。残金をこのまま送金とします」
堂々と言い切ると、
「ごめんね。間違えてたのまた私だったね」
癖つよ先輩はさっきまでの剣幕が嘘のようにあっさり折れた。
このやり取りでわかったのは、癖つよ先輩は集計表に本当の現金額を書いていなかったことと、両替金等○十万円を確保するより先に送金用のお金を集計データ通りに作っていたということだった。
そうすると、何らかの原因で違算が発生するたびに両替機の中の現金が減っていく。常に○十万円で普遍のはずの両替金が、集計ごとに徐々に減っていくのだ。そうして何ヵ月も集計をし続けているうちに違算額が膨れあがっていった。それが、私が入社したのを機会に本部の経理担当者が当店にやってきて正しく集計業務を行ったために発覚したのだった。
というわけで、今回も結局消えたお金はどこへ行ったのか不明であるものの、両替等○十万円は死守というルールを守れば今後莫大な違算が発生することはないはず……毎回ちょっとお金が謎に消えるかもしれないけど……ということで、今回もこれでリセットということで、次回こそ間違わないように、と本部の社員から念を押された。
その後、本部の経理担当者から個別の聞き取り調査があり、私は癖つよ先輩とのやり取りから、癖つよ先輩がどこをどう間違いがちなのかを話した。つまり癖つよ先輩は、
・店内全部のお金から両替機の中にあるべきお金を引いて残ったのが売上金だということを理解していない。
・データ上の売上金のことを、何が何でも絶対に送金しなければならない金額だと思い込んでいる(不足がある場合そのぶん減るということを理解していない)。
・集計表の一番最後に記入するマスは「データ上の売上金」ではなく「送金額」であることを理解してない。
・経費で申請すべきことを使った額ではなく残金だと思い込んでいる。
・両替機の中にある売上金ではない「いっぱいのお札」を要らないものだと思っている。
経理担当者は、癖つよ先輩はわざと横領をしている訳ではないのかもしれないが、もう信じられないといい、来月からは癖つよ先輩を集計業務を始めお金に触る作業全てから外すと言った。
コインランドリーで働きはじめて3ヶ月ほど経ったが、もう1万年くらい働いているかのような面構えでいる。そんなに大変な仕事でもないので。 大変なところといったら、夏は意外と...
おやつに梨食べてやる気をチャージしてきたので、続きを書く。 というわけで、両替等のお金○十万をまず作ったら、残りの現金が売上金のはずなのだが、残金がどう見てもデータ上...
結局お金はどこへ行ったんだ よーーー
帳簿がとんちんかんなことになってても、お金は減ることなく店内のどこかしらにあるはずなんですがね。どこに行ったのやら……。