2022-07-20

夏休みが始まる前に近所に男の子引っ越してきた。

外国の血が入っているのか真っ白い肌で堀が深くて映画の中から抜け出してきたような美形の男の子

けれど典型的な純日本人という名前ですこし不思議な感じがした。

男の子とは毎日遊んだ

僕らの住んでる貧乏しかいない、馬鹿みたいに広い団地でずっと鬼ごっこをしてた。

片親の家庭ばっかりだったから、外で遊ぶのに飽きたら誰かの家に行って勝手冷房かけてゲームやらなんやらして遊んだ

男の子母親も本当にびっくりするぐらい美人だった。

すごく若くて20歳ぐらいにい見えた。

たぶん俺らと同じで片親だったんじゃないかな。

父親を見たことはなかった。

いま思えば外国人の父親日本人母親が孕まされて逃げられてみたいな家庭だったのかもしれない。

すごく気のいいやつで、こいつと新学期から同じ学校だなんて最高だなって思ってた。

けれど夏休みが終わって、始業式の日になっても学校あいはいなかった。

始業式の半ドン終わって学校から帰りながら

団地友達みんなで

「なんでだよ」

「初登校は明日からなんじゃねえの」

あいつんちで昼飯食わしてもらおうぜ」

とかわいわい言いながら、あいつのアパートに行ったんだ。

けれどあいつの住んでたはずの号室にいくとそこは空き部屋になってた。

誰もいなくて不思議がってる俺らを怪訝そうに見てたおばちゃんに、

「住んでた母子引っ越したの?」

って聞いたらその部屋は春からずっと空き部屋だって言ってた。

でも確かに俺たちはあいつの部屋でゲームしたり、漫画読んだりしてたんだ。

みんなすごい不思議がってた。

あれから20年ぐらいたった。あん団地に住んでた奴なんて、みんなろくな事になってない

俺もそんな一人だ。

その日も日雇い仕事から帰ってきて、現場送迎のバスが発着する錦糸町で一人で酒をひっかけて飲んでた。

貧乏だと誰かと飲むより一人で飲んだほうが楽しいんだ。近況報告なんてしんどい話ばっかりしかいからな。

千鳥足で改札へ向かっていると、あの時の夏休みだけ団地に居た男の子母親が、

キーホルダーを付けた大きな登山用バッグを背負っって6歳ぐらいの女の子と手をつないで立っていたんだ。

そいつ女の子を後から来たおっさんに預けて、改札をくぐっていった。

だけどな、どう見ても歳をとってなかったんだ。

あれから20年たってるのに何一つ年を取ってない。

そりゃ多分服装とかは変わってる。でも20年前と一緒なんだ。

怖くなっちゃって家に帰るのも不気味で、近くのカプセルホテルでブルブル震えながら一晩過ごした。

一人になりたくなかった。誰かがいる場所で寝てたかった。

そういえば俺たちが住んでた団地、取り壊されて大きなマンションができるらしい。

なんとなくホッとする。

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