俺は小4のときに転校した。
小3までいた学校では遊戯王は流行っていなかった(誰かがやってるのを見たことがなかった)んだけど、
カードを1枚も持っていない俺に、親切な友達は余っているカードでデッキを組んで譲ってくれた。
で、対戦をする。勝てない。いくらやっても勝てない。
考えてみれば当たり前のことで、小学生が持っているカードで人に譲ってもいいと思うレベルのものだ。
友人たちがランプの魔精ラ・ジーンやらバードマンやらメカハンターやらヂェミナイ・エルフやらを召喚しているのに、
俺が出せるのはウィップテイル・ガーゴイルやらガーゴイル・パワードやらアックスレイダーだ。勝てるわけがない。
儀式召喚はすごい。普通に上級モンスターを召喚するには生贄が必要で、
召喚した下級モンスターを1ターンから2ターン守らなきゃいけない。
それに対して儀式モンスターは、手札に儀式魔法と儀式モンスターと
ヂェミナイ・エルフに蹂躙され、デーモンの召喚に踏み潰される俺のデッキだが、
「カオス・ソルジャーさえ出せれば」という気持ちで遊び続けていた。
これもまた考えてみれば当たり前のことなのだが、召喚する展開にすることができない。
儀式素材にしたいモンスターも、レオパレスのように薄い壁としての役割でいっぱいいっぱいだった。
ドローソースもほとんどなかった。デッキに1枚、強欲な壺が刺さっているだけだったように思う。
初手で必要なカード4枚が揃うという奇跡でも起きなければ無理だった。
攻撃力・守備力がブルーアイズと同等、儀式モンスターの青い枠、かっこいい見た目、
そしてなによりもアニメで主人公の遊戯が召喚して勝利を収めたあの活躍。
こいつを出して、これが俺の切り札だー!と活躍させてやりたかった。
だから俺は、積み込みをした。必要なカード4枚を事前にデッキボトムにまとめておき、
小学生の遊びだから「相手のデッキをシャッフルする」とか「カット」なんてことはやってなかったからな。積み込みは容易だった。
卑怯?確かにそうだ。だが、たかだか友人同士の遊びの決闘だ。しかもたったの1度の過ちだ。
汚い手を使ってでも、1度くらい勝ってみたかった。
そして運命の決闘。俺の切り札は、見事1ターン目にその姿を現してくれた。
これで勝てる。ヂェミナイ・エルフがなんだ、メカハンターがなんだ、デーモンがなんだ。