2020-03-13

ICUのベッドが足りないんならベッドたくさん廊下に並べて増やせばいいんじゃないか、とか、ECMOがなくなりそうなら今のうちに1000台くらい金持ちに購入してもらって寄付して貰えばいいんじゃないか、とか言ってる人がいるけど、なかなかそんなに簡単じゃない。

ベッドが足りないっていうのは、ただ単に患者が横になるベッドそのものが足りないんじゃなくて、重症患者管理をするためのモニター、人工呼吸器、点滴ポンプ、その他医療機材諸々含めて足りない状況で、それ以上に足りてないのはその特殊医療機器を使用しながら専門的な治療ケアのできるような医療スタッフだ。機材やスペースなどの物理的な余力だけでなく、それを使用できる特殊領域人材の余力がないってことだ。

医療スタッフっていうのは医者だけじゃない。救急病棟での勤務経験のある看護師が十分いなかったら医者なんて役に立たない。医療機器の取り扱いに長けた技師がいなかったら、ECMOが突然調子悪くなってエラー表示出てきたら医者看護師だけではどうしたらいいかからない。

ちなみに自分医者だけど、救急医療ICU、ましてやECMOを扱っての呼吸管理なんで全くもって専門外だ。

ある日突然今の職場から誘拐されて、医療スタッフ足りてないから新しく作ったこICUのベッドでこの新品のECMOを使って重症患者さんの治療を今から頼むぜ、なんて言われてもできるわけないわけだ。だってやったことないんだもん。

1か月くらい専門医にくっついて手取り足取り教えてもらえればできるようになると思うよ。ベースとなる医学知識はあるからさ。でも、本当に人材が足りなくなっている状況でそんな手厚い研修なんてできるわけない。

その上、今の職場には、ICUでの救急医療を要するわけではないけれども自分の専門領域医療継続して必要としている患者がそれなりにたくさんいるわけで、ある日突然自分が拐われていなくなったら、おそらくそ患者さんたちや同僚たちは困るわけだ。こんな特殊技能を持ってるわけでもない普通医者でもさ。

上記は極めて常識的な内容だろうと思っていたけのだけれども、医療に携わる人間でないともしかするとわからないのかもしれない、と思って書いてみました。

日常診療で、患者さんの常識医療従事である自分常識の間にズレがあることに気づくことが度々あるので。

そして自分が気づいていないうちに、医療者の常識患者に強いて戸惑わせていることもおそらくあるだろうから自戒を込めて。

  • 働け

    • おう、働いてるで。 コロナ怖いからあまり受診したくないから、長めに処方くれって人がここ数週間多くて、外来人数が普段より減って少し空き時間ができたから書いてみた。

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