第二外国語は理系も全員必修で、単位を取らずに卒業することはできない。
文系の第二外国語は普通に頑張っても単位を落とすというパターンがままあるが、理系の第二外国語は出席さえすれば九割九分単位はもらえる。
結果、再履修クラスは講義に出席することのできない人間の集まりと化してしまう。
必修なのでもちろん講義自体は受講するのだけど、最初の二三回だけ行ってあとは行かなくなる、というパターンの人間がとにかく多い。少なくとも自分はそうだった。
一回だけ、やる気のある先生の再履修講義にぶつかったことがあった。
その講義の先生はとてもいい人で、目が死んでる僕たちに対してもやる気を切らさずに授業をしてくれた。
放射性物質みたいに、回を追うごとに学生は半減していったけど、それでもその先生はめげなかった。
5週目くらいの講義から、学生数は7~8人くらいに安定してきたように思う。
そのうちの約半数は外国人留学生で、全員女性だった。おそらく、ほかの講義との兼ね合いで敢えて再履修クラスを選んだのだと思う。
この留学生たちは真面目で、学習能力が高く、ついでにみんな美人で、留学生が居なかったらこの講義は崩壊していただろう。
さらについでに言うならば、講義の先生もなかなかのイケメンだった。
掃き溜めVS鶴といった感じだろうか。
その講義の内容は熱心な先生だけに盛りだくさんであったが、特に学生同士のコミュニケーションを重視していたように思う。
その頃の自分はコンビニ店員以外の人間と会話を交わさないような生活であったので、講義とはいえ相手と一対一で会話するのは、結構しんどかったのを覚えている。
特にしんどかったのは、美人な留学生たちと会話をすること。フランスはアイコンタクトを重視する国なので、会話をする際はきちんと目を合わせないといけない。
クソ童貞なので目を合わせるのは至難の業だったし、劣等感みたいなものを存分に刺激された。
講義の到達目標は、かんたんな文を10ほど(Je m'appelle Masuda.みたいなやつ)覚えて、それを組み合わせて自己紹介や、それに対する質問ができるようになること。
90分で2つ3つの会話文を何度も何度も繰り返すが、次の週になるとキレイさっぱり忘れてしまう。
結構いい大学だから記憶力は人並みにあるはずなんだけど、やる気がないと人間はなにも記憶できないことを悟った。
自分以外の(留学生を除く)学生も似たような感じで、たった数語のフランス語の例文がなかなか覚えられない。
そのとき自分は四回生だったけど、自分より上の学年の人が何人か居た。
先生も熱心で、美人な留学生も居るし、なによりこれ以上留年するわけにはいかないし、この講義は絶対取ろうと思ったけれど、結局9週目くらいから行かなくなったのを覚えている。
あの再履修クラスで一緒だった人たち、途中でいなくなった人たちは今どこでなにしているのだろうか。