なんて大げさだなって思ってた
オリンピックを前にしてなんだか話の進みが早くなったような気がした
条件は良くも悪くもない
だから損はない
前よりも狭くなったけど、新しい家にも引っ越した
わたしたちも大きくなって、前ほどの広さの家も必要がないし、この新しい家にあと何年住むかもわからない
古い家を引き払って新しいところに住めるだなんてむしろラッキーではないか
なかなか話しを進めたがらない親を見て、ぼんやりとそんなことを考えていた
引っ越しが済んで一週間くらいしたころ、解体の見積もりをするために業者さんと一緒に古い家に入った
荷物はすべて引き払われてもぬけの殻のような家だけど、玄関を入って居間に続く扉のノブに手をかけたときに思いもよらない事が起こった
生まれてから今までの、この家とともにある思い出が走馬灯のように突然蘇ってきたのだ
小さな頃に転んでぶつかった思い出、思春期の頃に苛立ちに任せて扉を強く叩きつけた思い出、初めての給料で買った母へのプレゼントを抱えてドキドキしながらドアノブに手をかけた思い出
いい思い出もわるい思い出もとめどなく頭の中に蘇り続けた
この扉を開けば、当たり前のように家具が並んでいて当たり前のように母が台所に立っていて、わたしはそこを当たり前のように通り過ぎる
そうか、そんな当たり前の毎日はもう二度とやってくることはないんだ
もしかしたら過去に同じような経験をしたことがあったのかもしれない
引っ越しの忙しい最中、母がふと「悲しい」といった言葉の意味がそのときはよくわからなかった
両親が建てたこの家なのだからわたしなんかよりもっと沢山の思い出がある
母にしてみればわたしよりもよっぽど長く一緒にいる家族だったんだ
みんなの生活が便利になる再開発に文句なんてないけど、最後の一軒になってまで計画に賛成しようとしない人の気持が少しだけわかったような気がした
誰かが石を投げていいだなんて誰も望んでもないんだよ anond:20190118140917