2018-12-14

の子は突然ドロップアウトしてしまった

俺がいた大学は、一年生のときに週に幾度となく英語の授業があった。今みたいにSNSで事前に友達を作れるような時代じゃなかったので、入学してから友達作りは大抵英語クラスメートが中心になっていた。出身地や好きなアイドルなどの共通点を持ったグループが徐々にクラス内で出来上がっていくなかで、その子はずっとひとりぼっちだった。中国地方出身の、笑うとえくぼができるおとなしい女の子女子高生のノリで騒いでいた周りの女子とは違って、どこかミステリアス雰囲気を醸し出す子だった。男子校出身だった俺はその独特な雰囲気に魅了され彼女メアドを交換しようと試みたが、根っからの臆病な性格邪魔をしたため男子コミュニティの中から眺めているだけだった。

「あの子、再履修らしいよ。休学していたんだって

一ヶ月が過ぎたある日、昼飯を食べていたときに悪友が俺に話しかけてきた。コミュ力が高かった友人は最初の一週間で全ての女の子と一通り話をしてみたらしい。ふーん、と俺は適当に相槌を打ったが、友人は「やべえよな、必修の語学で再履修のぼっちだぜ?俺らはあんな奴みたいにはなりたくねえよな」とケラケラ笑いながら話を続けた。俺は少しだけむっとしたが、すぐに次の話題に切り替わったので咎めることもしなかった。

それから数日がたち、あの子は次第に授業に来なくなった。友達グループがほぼ固定化してきた時期だった。授業に来たとしても、教室の隅の方でひとりぼっち。授業に集中している様子もなく、ずっと本を読んでいた。今考えると、話しかける絶好のチャンスであったことは間違いない。しかし、俺は男子友達グループの居心地の良さに負け、ついに声をかけることができなかった。それから3週間がたち、ついにあの子が授業に来ることはもう二度となかった。ほどなくして退学したという噂が飛び交った。

いつかのテレビの街頭インタビューで、年配の方が「挑戦しなかった後悔は年を取ってから押し寄せてくる。あのとき失敗してもいいかもっと挑戦するべきだった」と話していたことを思い出す。もしあのとき勇気を振り絞って声をかけていたら、何か状況は変わっていたかもしれない。交際関係に持ち込むことは無理でも、あの子にとって気軽に話せる友達になれたかもしれない。

でも俺には「メアド交換しない?」の一言をかけるちっぽけな勇気がなかった。

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