2018-01-25

[] #48-1「本当にあった嘘の話」

年末年始というのを、何か特別な時期だと考える人は多い。

社会全体がそう考えるように動いているからだ。

だが実際のところは特別っぽくしようとしているだけだったりする。

個人にとっては何も変わらず、俺にとっても観ていたテレビ番組がいつもと違うくらいしか言えることはない。

それでも他にいえることがあるとすれば、この時期になると親戚の集まり我が家でやるのが恒例であることくらいか


しかし、それは俺たち兄弟にとっては煩わしいものだった。

歳の近い従兄弟とかもいないし、話せることがない。

あったとして話したいわけでもない。

お年玉という名の給料を貰う代わりに親戚に愛想を振りまく仕事だと割り切る必要がある。

その考え方でいくなら割がいいともいえる。

「おー、二人とも大きくなったなあ。長男の方はティーンエイジャーだっけ」

「そうだよ。バアちゃんも大きくなったね」

「ハハッ、言うようになったな。弟くんのほうは何歳だっけ」

「見てのとおりだよ」

俺はそれなりに場数を踏んできたからまだしも、経験の浅い弟は態度が露骨に出やすい。

「ああ、すいません。こいつ照れているみたいで……」

「構わん構わん」

とはいえ親戚も大概そんなことは承知の上である人が多く、お年玉をくれた後は俺たちをほっといてくれることが多い。

まあ、みんなだって他に話をしたい相手がいるだろうしな。

兄貴いくらだった?」

「お前と同じだよ」

「つまり、さっきのジイちゃんに貰ったのと同じ額かあ」

というより、貰ったお年玉は全て同じ額だった。

どうも親戚一同で決め打ちしているようだ。

「なあ、俺もう疲れてきたよ。外に遊びに行きてえ」

「母さんと父さんに、今日は家にいるよう言われているからなあ」

遠くの親戚より近くの他人とはよく言うが、自分たちテリトリーにそういった存在がわんさかいるというのは、予想以上に息が詰まる。

俺たちは年長者たちのいる席に引っ張りこまれないよう、自分たちの部屋に避難することにした。


しかし、そこにも親戚はいた。

その人は父の妹、つまり俺たちにとって叔母にあたる。

勝手テレビゲームをやってくつろいでいた。

「よう」

俺たちの存在に気づいても、悪びれる様子はなくそのままゲームを続行している。

「こんなところで何やってんの叔母さん」

だってあんなとこいたって退屈だし」

叔母は冒険家かい胡散臭いことを長年続けており、自由奔放というか、とても豪快な人だった。

「何でもいいけどさ。さすがに俺たちが来た以上はゲームすんのやめてよ」

「しばらく待ってて。クリアできるまでやるから

ここまで図々しくないと冒険家なんてできないのか、それとも叔母がイレギュラーなだけなのだろうか。

「それだと俺たちが退屈なんだけど」

「え~、じゃあ、そうだなあ。私のこれまでの冒険を片手間で話してやるよ」

俺たちの顔が歪む。

「いや、昨年も聞いたし」

「それとは違うヤツだから大丈夫だって!」

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