かなり大規模なキャンプ地を見つけたのさ。
私は気になって、その中の一人に「何でこんなところで、大人数でキャンプを?」と尋ねた。
すると「今は休憩中なんだ。我々は安らかに過ごせる定住先を求めて旅をしている」と答えたんだ。
私はそれを聞いたとき、疑問に思ったね。
彼らには独自の文化があり、他の文化を持つ村や町で定住することは難しそうに思える。
それに、彼らの年季の入った馬車の風合いから、長年旅をしていることが読み取れた。
このままじゃ一生無理だと思った私は提案したんだ。
「定住先を見つけるのではなく、あなたたちで作ってみてはどうか」と。
彼らにとって、それは意外な提案だったらしい。
そして、定住先を求めて旅をするよりも遥かに難しいことだと思っているようだった。
私は「何ならあなたたちが今いる、この森の中に作ってしまえばいい」と言ったが、彼らは笑った。
なぜなら、彼らの摂っている食事は主に肉。
その森には食べられるほど大きな獣はほとんどいなかったんだ。
「食べられるものは肉だけじゃないよ」と言って、彼らに開拓のためのノウハウを叩き込んだのさ。
その気になれば、あっという間だったよ。
そうして、その森は立派な村となり、今ではリンゴの特産地として有名な町にまで発展したのさ。
「へ~、すごいね叔母さん」
「ふふん、まあね」
話が終わり、叔母さんは少し悦に入ったような顔をしている。
弟も感心しているようだったが、俺の顔は歪んだままだ。
なぜかというと、これまで俺は叔母さんの話を、弟よりも何度も聞かされている。
さすがに“傾向”というものが分かってきたのだ。
「叔母さん。その話、“盛ってない”?」
「何でそう思う?」
「いつの話か知らないけど、叔母さんが冒険するようになったのって十数年ほど前のことでしょ。開拓の話なんて、もっと昔のイメージなんだけど」
「特に気になるのが、リンゴの種が出てきたあたりだね。それってアップルシードのパクりじゃん」
俺がそう指摘すると、叔母さんは途端に沈んだ表情をする。
そんな露骨に態度に出たら、認めたようなもんだぞ。
「へえ~、アップルシード知らないけど、今の話ってパクりなんだ」
挙句の果てに開き直ってきた。
「いいかい、これは『とりあえず話に興味を持ってもらう』ための話なんだ。だから多少の脚色はしないといけない。じゃなきゃアンタたちは聞く気すら起きないだろ」
こんな感じになるから、叔母さんの話を聞くのは嫌なんだよなあ。
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