なぜなら食材を中途半端に余らせたくないので、一回の食事で使いきろうとするからだ。
このせいで汁物は、むしろ煮物といった様相を呈することもしばしばある。
それを何か上手いこと別の料理に使えばいいと思うかもしれない。
だが、我が家にどんな食材が余っているか把握し、それを献立にどう捻じ込むか、といったことを要求するのは酷というものだ。
じゃあ、この冷凍された野菜はその名残なのかというと、ちょっと事情が異なる。
料理好きを自称するタイナイが言っていたことだが、「野菜は大量に買って加工だけしておき、後は冷凍しておけば利口」らしい。
やたらと熱弁するのでやってみたのだが、そもそも俺とタイナイでは“前提”が違う。
料理好きな輩の言う利口な、上手い料理法ってのは、他人の環境やスペック、ライフスタイルを一切考慮しないからアテにならないのだ。
だがタイナイだけではなく、俺もその“前提”の重要性をまるで分かってはいなかったのだからお互い様である。
こうして冷凍した野菜は活用の機会に恵まれず、冷凍庫に眠り続けた状態だった、というわけだ。
解凍したら水分と一緒に野菜の旨味的な成分が出て行ってしまうと、どこかで聞いたのを思い出したからだ。
このスープだけでは食べられたものではないので、野菜から滲み出る成分に期待しようという算段だ。
仕方がないので大きい鍋に移し、更に追加でコンソメと水を投入する。
すると、スープだけでお腹一杯になりそうな量になってしまった。
不味かったら大事だぞ、これは……。
その日は料理をしてみようと思った。 大した理由なんてない。 腹が減っていること自体は大義名分だ。 いくらでも即席食品がある環境で、料理をほとんどしない俺が「自炊」という...
≪ 前 煮込んでからしばらく経ったので、野菜をスプーンで軽くつついてみる。 やわらかくなってきたので、ひとまず味見だ。 野菜は野菜でしかないので、肝心のスープを舐めてみる...
≪ 前 本当は色々作るつもりだったが、スープの時点で俺は既にやる気がなくなっていた。 腹が減っていた筈なのに、食欲もほとんどなくなっている。 それでも実食。 肝心の味はと...