煮込んでからしばらく経ったので、野菜をスプーンで軽くつついてみる。
やわらかくなってきたので、ひとまず味見だ。
うん、大分マシになった。
あとは、もう油を入れればいいか。
センセイによると、人間というものは油が好きなように出来ているらしい。
この不出来な野菜スープも、オリーブオイルあたりのイメージ的に良さそうなものを入れれば帳尻は合うだろう。
そうして周りを探してみるが、オリーブオイルはなかった。
まあ、我が家の食卓でオリーブオイルを必要とする料理がないから当たり前ではあった。
タイナイとかは料理好きだから、きっと常備してあるんだろうが。
だが、幸か不幸かなぜかゴマ油は見つかった。
量はほとんど減っていない。
こういった調味料を使いきろうと思ったら、よほどのことがない限り難しいのだろう。
だったらなぜ買ったのかとか、なぜ残したままにしているのかとか、そういったことを気にしている場合ではない。
せめて俺が手向けに使ってやるべきなのかもしれないが、とてもじゃないが使う気にはなれなかった。
そして卵を割り入れる。
人間は卵が好きなように出来ていることを、俺はビデオ屋の店長から学んだ。
しかし割り入れた卵は、映像とか写真とかで見たような綺麗な造形にはならなかった。
スープ全体に淀みが発生し、それと同時に俺から食欲を奪っていく。
仕方がないので、俺は胡椒をパッパラ振りかけた。
他にも何か細々と加えた気もするが、加えていないような気もする。
俺はおもむろにカレーのルゥを放り込んだ。
カレーライスにしようとも思ったが、今から米を炊く気も、炊くまで待つ気にもなれなかったので、これで良しとしよう。
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