2016-05-20

娘の背中スイッチが出来た。

赤ん坊の朝は早い。生後一ヶ月になる娘は完全母乳で育てているが、2~4時間に1回のペースで授乳せねばならない。特に夜間は4時間ほど寝てくれているが、その分朝は腹が減るのか、お目目ぱっちりで寝ずに泣き続ける。

である私は"母乳"など出せるはずもなく、当然その分育児負担は妻が大きくなる。ただでさえ、妊娠出産の時点で女性に発生する肉体的・社会的負担は大きいのだ。授乳後の寝かしつけくらい、夫の役割であるべきだろうか。

新生児(生後28日まで)期間はサクッと寝てくれていたのだが、最近はなかなか寝てくれなくなった。なぜなら、娘の背中スイッチが出来てしまたからだ。

腕の中で眠った娘を布団に置こうとする瞬間、暴れだすのだ。布団においても、背中を支える手をそーっと引き抜く瞬間に起きてしまう。起きれば当然娘は泣き出す。休んでいた妻も目を開ける。

妻「授乳は疲れるし、次のおっぱいを作るためにも寝たい。うまく寝かしつけてくれ」

私「それが、ネネ(娘の名)が布団に置かれたことを感知するようになってしまったんだ」

妻「1週間前くらいかネネ背中スイッチ増設されたらしい。テスト完了して、最近稼働しだしたみたい」

そんなことがあるだろうかと、私は訝しんだ。抱っこしている娘の肩あたりを顎で挟むようにして、縦抱っこに切り替える。すると何ということだろう。ネネ背中にかすかな凹凸を確認できるではないか

私「なんで、今まで気が付かなかったのだろうか」

妻「病気と同じなの。名前を与えられて病気になるように、存在を指摘されないと見えてこないのよ。私もTwitterの2016AprilBabyクラスタで教えてもらったのよ」

ネネの服をずり上げると、青色スイッチがそこにはあった。蒙古斑よりも青く、そう妻の生まれた町から望む日本海の色だった。

私「そうか、でも見えるようになってしまえばこちらのものだ。スイッチが反応しないように、押した状態を維持して布団に置けばよいのだろう」

妻が驚いた顔をして、静かにうなづく。スイッチ存在に気が付かなかった、そんな察しの悪い夫がすぐに解決策を見出したことを喜んでいるようだった。

妻「やってみて」

ネネのお尻を私の腹にあてるようにして、縦抱っこを続ける。子守歌をうたいながら歩き揺さぶれば、忽ちネネの瞼は重くなる。このタイミングならば気づかれまい。私は恐る恐る背中スイッチを触れ、ゆっくりと押し込んだ。

果たしてネネは眠ったままだった。勝利のファンファーレ脳内で鳴り響き、妻にドヤ顔を見せる。私はネネの布団まで歩くと、そろりと腰を下ろした。まずは背中を布団に下ろし、次に頭を枕に下ろす。ゆっくり背中と頭を支える手を抜いていく。大丈夫だ、寝ている。

私の太ももの上にまだネネの足があった。これを布団に下ろそうとした途端、ネネの目はカッと見開き、泣き声が部屋を満たした。

私「なんでだ!背中スイッチは押したままにしていたのに」

妻「ごめんなさい。伝え忘れていたわ。ネネの足には温度センサーがあるの。正面で抱っこしてる私たちの腹部の暖かさをモニタリングしているのよ」

ネネの足裏を確かめてみると、すべての指に赤液温度計が伸びているではないか。その赤さが憎らしくもあったが、娘が元気に生きる証だと受け入れることにした。今すべきは娘を寝かしつけ、次の授乳に備えることだ。

泣いているネネを抱き上げ、あやす。もう背中スイッチも、足裏の温度センサーも忘れない。必殺の子守歌でネネの瞼はイチコロのはずなのに、なかなか落ちてくれない。

何故だ?何故だ!

慌てて妻の方を確認すると、妻は悲しく微笑んで、そのまま瞼を閉じた。そうか、そうだったのか。妻に言われなくてももう分かる。僕も現実を受け入れる覚悟をしてネネ視線を戻した。

ネネの頭にはまるでタケコプターのような黄色い高度センサーがついていたのだった。

  • カクヨムでやれクソ雑魚ナメクジ

    • 雑魚ナメクジとはひどい言い草だな、と思ったが、イマイチ盛り上がりにかけるカクヨムに文芸作品を集めたい はてな村民だと思ったら、なんだかツンデレっぽく見えてきた

  • ブコメみてて思ったけど これを創作とか執筆とかショートショートだとおもっちゃう人と、あるあるネタだと思う人でわかれてる。 子供がいる(いた)家庭にとっては超あるあるなんだ...

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