彼らは、ただその卓越した運動能力や技術だけを切り売りしているのではない。
厳しい練習や上下関係に耐え、競技で活躍する人間は、それだけで優れた人格の持ち主でもある、
というイメージを売っているのだ。
実際、オリンピックで金メダルを取ると(客寄せパンダではあるが)政治家への道が開けたりするし、
ついでに言うと顔が多少アレでも異性にモテる。
もちろん、それは幻想に過ぎず、素行の悪い体育会系を挙げていけばキリがないのだが、
そんなのは一部の人間だけという理屈で、とりあえずトータルとしてはプラスということになっている。
そして、学校や企業がカネを出してでも彼らを雇い入れるのは、そのプラスがあるからに他ならない。
好イメージを利用すれば相乗効果が狙え、経営上割に合うとみなされているからである。
都心のキャンパスから離れた場所にある寮に住まい、大学にもろくに通うことなく大学生を名乗ろうが、
午前中しか働かなかろうが、経済的に割に合う限りは、何の問題もなく受け入れられているのだ。
要は、ドル売りをやっている声優みたいなもんである。よくは知らんけど。
そういう路線を取る限り、声だけでなく、アイドルに準じた資質と言動も当然に求められる。
まあ、普通に考えて彼女らが恋愛してないわけがないのだが、してないことにしてないと、
商売上まずいことになるのだ。
そして、アイドル路線をやめるのなら、気色の悪いファンから金をもぎ取ることは諦めねばならない。
スポーツと品性は関係ねえだろ、と言うのはたやすい。だが、実際はそんな単純な話ではない。
スポーツマンは人格面でも優れた資質の持ち主である、という危うい幻想の下にこそ、
スポーツビジネスはかろうじて成立しているのである。そうでなければ、誰もカネを出したりはしない。
その幻想を失った典型例が亀田ブラザーズである。一度悪いイメージがつくと、その先の凋落は恐ろしく早い。
イメージは虚像に過ぎずとも、それを裏切る行為は許されないのだ。