先日、日本をよく知る欧米や日本在住の日本研究者187名から声明が発表された。
詳しい内容は以下の声明を見ていただければよい。
基本的には
・安部総理への演説に一定の評価をしつつ、歴史修正主義的な政治方向への苦言
といった内容だろうか。
実際あの声明はかなり抽象的であり、ある種宣誓のようなものであったのでかなり多様な解釈が可能になっているように思える。
ただ、この声明を私なりによく読んだうえで大きな違和感を覚えた。
端的に言えばこの声明は学問を放棄しイデオロギーに唾棄してしまったからだ。
これだけではなかなか伝わらない部分もあるのでもう少し詳しく説明したいと思う。
正直なところ安部政権の過度な歴史学への介入は私も快くは思わない。
多くの人が言うように過去から存在した資料への誠実な向き合い方を阻害しかねないからだ。
だが、それ以上に異常な状況だと思ってしまったのはこの声明自体がその安部政権への鏡になってしまっているからだ。
・確かに彼女たちの証言はさまざまで、記憶もそれ自体は一貫性をもっていません。しかしその証言は全体として心に訴えるものであり・・・
・日本帝国の軍関係資料のかなりの部分は破棄されましたし、各地から女性を調達した業者の行動はそもそも記録されていなかったかもしれません。
これははっきり言っててしまうと資料や細かい積み重ねなどどうでもよく被害者がいるのだから
そうでなければならないというある種の偏った視点からのメッセージだからだ。
安部政権を批判しているつもりが自分たちで全く同じことをしようとしているのだ。
もしこのような考え方が歴史学全体を覆っているのであれば今後日本の歴史は安部政権ではなくとも様々な形でゆがめられるだろう。