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2022-03-17

舞台毒薬と老嬢」を見た(ネタバレ

 もともとが1941年ブロードウェイ演劇作品ニューヨークブルックリン舞台に、冒頭ではヨーロッパ戦争が始まったけどアメリカ平和でいいわねえという、奇しくも時事性が出てしまった感じの会話で幕が開く。1幕目は「ハリーの災難」のような死体隠匿をめぐるお話が中心。2幕目になってからは主に殺人鬼の兄の処遇をめぐるお話……でいいのかなあれは。

 ブラックコメディだの安楽死だのという触れ込みだから、なんかそういう社会派な中身なのかしらと思ったら、どうも本来パルプ・フィクション的なゴシックホラーパロディ作品だったっぽい雰囲気がある。フランケンシュタインアインシュタインコンビかいうどうしようもないダジャレも出てきたりするし。作品タイプとしてはラヴクラフトの「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」あたりが近いだろうか。主人公が自らの家族秘密を知ることで、自分も呪われた血族の一員であることを知ってしま絶望するが実は……というあらすじ。アメリカらしいピューリタン的な価値観が色濃く残る社会での実は私生児だったぜヤッホーというオチは「緋文字」とかあのへんのパロディとして見てもだいぶ面白い。というかお前牧師の娘と結婚しようとしてるのに私生児大丈夫か?

 ただまあそのへんのアメリカ文学的な骨組みはコメディとしての演出で追加されたドタバタ劇でうまいことカモフラージュされてる感じがなくもない。まあ、呪われた血族ネタは今となってはクリティカルポリティカルコレクト案件だし、作品賞味期限的にも相当ギリギリな感じもするからね。精神病院収監オチなんて今時バットマンじゃないと許されないのでは(偏見)。

 コメディとして見た場合、流石に古い作品だけあって笑いのテンポのんびりしている感じがあるが、そこはまあ演出俳優の力で追加されたドタバタ劇でだいぶ補強されている。まあ観客の大半はこっちを期待して見に来ているようなものだろうし。自分まさかアメリカゴシックホラー的なものが見られるとは思っていなかった。

 2幕目で劇作家を目指すアルバイト警官がメドレー一人芝居を披露する場面があるのだけれど、これがなかなかに見事。瞼の母から、こいつは春から縁起がいいわえで三人吉三、平手がどうとか言っていたからたぶん天保水滸伝、それとおそらく一本刀土俵入りと続けざま。演じているのはの嘉島典俊という人。ぐぐったら歌舞伎経験大衆演劇経験もある人らしい。新橋演舞場という和風舞台を生かした実にいいものだった。

 「ぼけ酒」というのがキーアイテムとして出てくるのだけれど、飲むとボケるとかそういうのではなくて、梅酒の要領で木瓜の実を漬けた果実酒のことらしい。子供の頃によく飲んでいたというセリフがちょいちょいあって、そういやうちの親も梅酒を水でうすめたやつを昔はみんなジュース代わりに飲んでたと言ってたっけなあと思ったり。

 
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