2022-01-23

大学教員卒論代行を取り締まるのは不可能に近いという話

Fラン大学では学生の半分が卒論代行業者に頼んでいるろいうツイートがバズっていて、代行も見抜けない教師けしからんというリプが多数ついていたけど、大学教員が代行を取り締まるのは現実的には不可能に近いという話。

ちなみに自分大学教員はいっても一般教養と導入ゼミしか担当したことがない若手(といってもいい歳だけど)なので、あくまで以下の内容は「おそらくこうだろう」という話だということは断っておく。

https://twitter.com/lalalamiyo/status/1483089094112837632?s=20

まず、代行を発見するのは実は難しい。

剽窃(出典を示さなコピペ)であれば、文章のつながりがおかしかったり、いきなり教えてない専門用語が出てきたり、ひどい時には「ですます調」と「だである調」が混ざっていたりして、検索すれば元の文章が出てきたりする。コピペ元は大抵ネットで読める文章だ。

逆に言えば、わざわざ本を読む学生は、コピペをしない。

それに比べて代行は、書いているのが別人なだけで実際に書かれているから、代行業者コピペをしていない限り、文章自体には不自然さがないはずだ。

普段から文章をやりとりしている場合ならまだしも、単発のレポートでこれを見ぬくのはかなり厳しい。

卒論なら普段から文章をやり取りしているから見抜けるかもしれないが、中間報告や卒論ゼミでの課題レポートも代行されていたら見抜くすべはない。そこで提出されるのは、同じ人物が、ゼミ指導を受けて書き続けた、しごくまっとうなレポートからだ。

書いた人が、学生ではないというだけで。

質疑応答で分かるだろう、というコメントもよくある。確かに見抜けるとしたらここだと思うのだが、それも想像されるほど簡単ではない。

まず、「自分で書いたものなら質問に答えられるはずだ」という考えは甘い。そこそこ優秀な博士後期課程の院生でも研究会では質問への応答に困ることがあるのであって、学部生なら、自分でした作業・書いた文章についても、立て板に水と説明できるのはごく少数だろう。

かつ、口頭での応答というのは、文章を書くのとは異なるスキルが求められる。受け答えははきはきとしているが文章を書くと無茶苦茶学生や、受け答えはしどろもどろだが文書は書けるという学生は、一定存在する。

文章は書けているのに質問に答えられないからといって、それが代行された文章からなのか、単にその学生が「口頭で他人質問に答える能力が低い」からなのかは分からない。

そういうわけで代行を見抜くのは世間想像するより遥かに難しいのだが、より深刻な問題は、見抜いたところで取り締まるのがほぼ不可能だということだ。

他の不正行為、たとえばカンニング剽窃であれば、証拠が残る。カンニングなら試験中にスマートフォンを動かしていた履歴だったり、剽窃であれば提出されたレポート卒論のものコピペ元の文章を示せば、不正行為はほぼ立証できる。

しかし代行の場合、そういった証拠がない。証拠がない状態不正行為を疑う発言をすれば、学生からハラスメントとして逆に訴えられかねない。

しかも、代行を疑った教員学生にかける言葉は、「本当に君がこの文章を書いたの?」だ。これは暗に、「君にこの文章を書く能力がない」と言っている。

君にこの文章を書く能力があるとは思えない。これは、確実にアカハラとして訴えられる発言だ。もし代行を証明することに失敗したら、学生人権窓口に駆け込まれ場合によっては保護者が出てきて、最終的には教員の側が処分される。少なくとも、口頭かメールでの注意まではいきそうだ。

そういうわけで、かりに普段ゼミでずっと黙っている学生が、締め切り前に作成者欄が空白になったwordファイルを送ってきても、大学側にできることは少ない。

そういうファイルを受け取りたくはないけど、それを取り締まることまでが仕事とは思えないし、それを取り締まるための手段こちら側にはない。

  • 参考文献を持っているのかを聞けば判明するだろ 卒論とはいえ、参考文献無しの論文なんてありえないからな

    • 業者がそういう場合の対処マニュアルも売るだけだな 意味ないな

  • 自衛隊のレンジャー訓練みたいに学生を数か月間試験会場に閉じ込めたほうがいいね

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